地獄の旅は道づれに 4

文字数 1,140文字

「それじゃ、戦場の下見でもしようじゃないか」

「戦場って、この村の事を言っているのか? もう少し言葉を選んだらどうだ?」

 エルフ達の前でそんな事を言うサーラをトレイは嗜めた。

「それでは、孫娘のナヨを案内に付けましょう」

 トレイとサーラ、エルフのナヨといった3人で村の下見をする。

 村は殆どの家が空き家になっていた。トレイがそれを尋ねる。

「ナヨさん、空き家が多いみたいだけど」

「えぇ、多くの仲間達は森の中へと逃げていきました。森で静かに暮らそうと……」

「それならば、わざわざ国の兵隊が来るのを待っている必要なんて無いんじゃないのか?」

 トレイの言葉を聞いてナヨはフフッと寂しげに笑った。

「私達は囮なんです。いくらエルフが森に慣れているとはいえ、国から逃れる深い森の中へ逃げるまでは時間が掛かります」

「そうですか……」

「胸糞悪い話だろ?」

「そうだな」

 同じ人間という種族だというのに、トレイは人間に対して敵意を覚える。

 改めて村を観る。防壁や柵といった気が利いたものはなく、ガランとして守りには適していなさそうだ。

 勇者達に蹂躙される未来しか見えない。

 そんな時だった、1人のエルフが慌ててこちらに走ってきた。

「先遣隊だ!! 国の軍がやってきている!!」

「来たか、行くぞ!!」

 サーラは弾けたように駆け出し、トレイも遅れてその後を追いかけた。

 村の入り口には30人ほどの小隊が居る。

「国の決定で貴様らは奴隷になることに決まった。抵抗すれば勇者様に皆殺しにされるぞ!!」

「どうか、どうかお許しを」

 村長が言うのを鼻で笑って隊長が言った。

「逃げた者がいれば見せしめにお前を殺してみるか、その上で追いかけてとっ捕まえる。全く無駄なあがきを……」

「そこまでだ!!」

 サーラは飛びかかって聖剣ロネーゼを抜いて魔力を込める。

 短剣のようなそれが、白い光が補って、立派な一振りの剣へと形を変えた。

 その刃は隊長の首元を捉えていた。そして体と首を切り離す。

「聖剣のくせに中々いい剣じゃないか」

 考え無しにサーラは切り込んだわけではなかった。隊長が一瞬で絶命して部隊には動揺が広がる。

「おい、アンタも手を貸せ」

「だから俺の名前はトレイだって言ってんだろうが!!」

 トレイは魔剣ムゲンジゴクへ魔力を込めた。剣身が熱くなっていく。

 統率の取れていない部隊との乱戦が始まった。まず敵だと認識されているサーラに何人かが斬りかかった。

 それを飛び退いて剣で受け止めて、サーラは聖剣を真横に振り、空を斬る。

 その瞬間、光の刃が飛んでいき、兵士を切り裂いた。

「伝承通りだな、便利な剣だ」

 トレイは魔剣を下に構えて突っ込むと、1人の兵士を斬り上げる。

 剣も鎧もドロリと溶かして、真っ二つになる。断面からは業火が吹き出た。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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