生と死と 5

文字数 871文字

「待て、ムツヤ!!」

 アシノの静止も聞かずにムツヤは飛び出す。そんな彼を仲間達も追う。

「お前!! 今すぐやめろ!!」

 ムツヤがそう叫ぶが、目の前の人間はガクリと倒れ、絶命する。

「くそっ!! 何が目的なんだ!!」

「あなた達は……。勇者アシノ?」

 ルクコエと呼ばれていた女性は長い黒髪に白いローブを身に纏っていた。

 黎明の呼び手のメンバー達は武器を構え、ムツヤ達と対峙する。

「私は死を望む者達に死を与えているだけです」

「そんな事!! 許されるわけがないだろ!!」

 ムツヤは怒りをあらわにして言う。

「何故ですか?」

 ルクコエは冷たい顔をして問いかけた。

「人を殺して言い訳がない!!」

「この者達は自ら死を望みました。私はその手伝いをしただけです」

 その言葉にムツヤは勢いで返す。

「だからっで、だからっで、そんなのはダメだ!!」

「何故、ダメなのですか?」

「それは……」

 ムツヤは言葉に詰まってしまった。その間もルクコエは続けた。

「悪いのは私ではありません。この者達が死にたいと思うこの世界です」

 それを聞いてルーが言う。

「それで本当に殺しちゃうのはあなたのエゴよ」

 ルクコエはフッと笑って言葉を返した。

「死にたいものを無理に生かす方が残酷ではありませんか?」

 シンと静まり返った中でムツヤが叫ぶ。

「それでも、それでも、ダメだ!! 俺が許さない!!」

「お話になりませんね。そんな感情論こそ本当のエゴです」

 そう言うと同時に黎明の呼び手のメンバーがアシノ達に襲いかかる。

 ムツヤが圧倒的な力で一人ひとり倒し、吐かれた血で白い雪が赤く染まった。

 仲間達の出る幕は無く、ルクコエを睨み続けるだけだ。

 黎明の呼び手を蹴散らした後にムツヤがルクコエを見て言った。

「降参しろ!! 後はお前だけだ!!」

「しませんよ?」

 ルクコエがニコリと笑い、杖を掲げる。すると喪服に身を包んだ半透明な女性が現れた。

 それはムツヤに向かって一直線にやって来る。

「まずい!! ムツヤ避けろ!!」

 アシノに言われた通り、ムツヤはそれを飛び退いて避けた。

「あなた達にも死をお与えしましょう」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み