千年前の物語 3

文字数 1,068文字

 魔人エィノキが待ち構えている枯れたダンジョンの前へ、勇者ソイローク達は辿り着く。

 入り口にはスケルトンやゾンビといった人形の魔物から、昆虫のような魔物まで、勢ぞろいだった。

「こりゃ選びたい放題だな」

 ソイロークはニヤリと笑って軽口を叩く。

「えぇ、行きますよ!」

 ニシナーはソイロークに身体強化の魔法を掛けた。それと同時に彼は飛び出す。

 詠唱を終えたサズァンが上空から真っ黒な剣の雨を降らせた。

 ざっくりと魔物の数を減らし、生き残った強い魔物をソイロークが斬り捨てていく。ニシナーも炎、氷、雷といった魔法を放ち援護した。

 入り口の魔物をあらかた倒し終え、いざ枯れたダンジョンへ踏み込もうとした時、ソイロークはふと歩みを止める。

「なんだ、お出迎えか」

 魔人エィノキが宙を飛んで、枯れたダンジョンの奥からやって来たのだ。

「貴様たちは勇者か?」

「あぁ、俺の名はソイローク。冥土の土産に覚えていってくれよ!!」

 そう言って、彼は魔人エィノキに斬り掛かった。

 分厚い防御壁で剣撃を弾き、勇者たちをエィノキは見下ろす。

「二つ良いことを教えてやろう」

 唐突にエィノキは語りだした。

「ひとつ、お前達は俺の目的を邪魔することが出来ない」

 そこまで言うと、エィノキは無数の光弾をソイローク向けて打ち下ろす。

 軽々とそれらを(かわ)してソイロークが見上げると、続けて言葉を出し始めた。

「もうひとつ、俺を倒した所で世界は平和になんかならない」

「そりゃ良いことを教えてもらった。どっちもお前の妄想だがな!」

 ニシナーとサズァンが援護で魔法を放つ。雷鳴を轟かせながら雷がエィノキの防御壁を削る。

 次に、ソイロークの重たい一撃で防御壁は音を立てて崩れた。

 エィノキは地上に降り立つと、剣を引き抜いてソイロークと対峙する。

「来い」

 挑発を受けてソイロークが飛び出した。剣と剣がぶつかり合う。

 斬り合いは僅かにソイロークが押していた。お互いにかすり傷が体に増えるが、致命傷にはならない。

 永遠に続くかと思われた一進一退の戦いは、唐突に終わる。

 ソイロークの力を込めた剣がエィノキの首を捉えて、斬り飛ばしたのだ。

 静寂が辺りを包む。息を切らせながらソイロークが言う。

「終わった……、のか?」

 首と胴が離れた魔人は動く気配もない。

「ついに、ついにやり遂げたのですね!」

 ニシナーが駆け寄りソイロークに言った。サズァンも少し気が緩んだその瞬間だった。

「娘、一つ良いことを教えてやろう」

 頭の中に響く声にサズァンは辺りを見渡した。遠くのソイロークとニシナーは声に気付いていないようだ。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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