王都の皆には内緒だよ! 6

文字数 1,169文字

 銀色に薄く青を塗ったような刀身が太陽に照らされて美しく光る。

 横薙ぎに振るうと、突風が生み出され、目の前に砂埃が舞った。

 サツキは緊張しながら魔力を込めてみて驚く。普段遣いの剣とは比較にならないほどスッと力が入る。

 そして、また振るう。

 瞬間、風の刃が剣の軌道上に生まれて飛び出す。目の前にあった木々は真横に切れ、時間を置いて倒れてきた。

「これが魔剣……」

 少し力を込めて軽く振っただけでこれだ。この時、サツキの心の中は様々な感情がグルグルと巡っていた。

 1つは魔剣に対するワクワクとした高揚感。もう1つは恐怖。

 最後に、こんな強力な武器があるのならば、私達の今までの鍛錬は何だったのだろうという虚しさ。

 剣を鞘に収めて、感情を微塵も顔に出さずにサツキは振り返って戻ってきた。

「魔剣ゲキヤバなんですけど、サツキ大丈夫!?」

「あぁ、使いこなせるようになるまで時間は必要かもしれないが」

「はいはーい。次はクサギちゃんの武器ね」

 ルーが言うと、クサギは苦笑いをして指先で顔をかく。

「えーっと、武器っていうか、ウチは回復術師で戦闘はそんなになんですけどぉ」

「まぁまぁ。何かあるでしょムツヤっち!」

「はい!」

 ムツヤが取り出したのは赤色のシンプルな杖だった。杖というより棒と言った方が近いかもしれない。

「それは…… 俺の専門外だけど、まぁ使ってみてよ」

 クサギは受け取ると、驚きを隠せなかった。

「何これ!? 魔力の伝導率高すぎるんですけど!?」

 突然そんな物を渡されて、普通に持つことが出来るクサギの実力は確かなものだった。

「試しに使ってみるけど、怪我人居ないから支援魔法か防御の魔法しか使えないかー」

「私が実験台になりますよぉー」

 そう言って名乗り出たカミクガにクサギは支援魔法をかける。

「マジパネェ!! 魔力の通りが全然違うっすわ!!」

 支援魔法を掛けられたカミクガは試しにその辺を走り回ってみる。元から速い彼女のスピードは更に速いものになっていた。

「何かいつものクサギちゃんの魔法より、更に力が漲る感じですよぉ」

 次にクサギは防御壁を展開してみる。

「あー、パないっすわ。やっぱ楽っすね」

「試しに攻撃でもしてみる?」

「頼んます」

 ルーは精霊を召喚して防御壁を力いっぱい殴らせた。相当な衝撃だったはずだが、防御壁はビクともしない。

「衝撃の伝わりがちょろっとだけって感じっすね」

「えー。結構本気で殴らせたんだけどなー」

 ルーは少し自信を失ったが、それよりも杖に興味が行っていた。

「凄いな。それに魔力の伝導率が高いなら、その辺の人間だったら杖で触れるだけで気絶させられそうだね」

「なるほど、そういう使い方もあるっすね……」

 ギルスの発言になるほどとクサギは思う。

「ムツヤさぁん、私もいい武器が欲しいですぅ」

 カミクガはムツヤを下から見上げて言った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み