はじめての武器屋 6
文字数 1,462文字
「ギルス、どうせお前には嘘が通用しないから最初に言っておくぞムツヤ殿は少々『訳あり』だ」
意味深にモモはそう言うが、ギルスは笑って答える。
「大丈夫大丈夫、俺はこの店で盗みを働く者以外は、冒険者から殺人犯まで誰でもウェルカムだ!」
ギルスは徹底的に客を選ばなかった。誰からでも買うし誰にでも売る。
良くも悪くも大衆とは違う倫理観を持っていた。
「で、その剣を売りたいんでしょ?」
言葉に出してもいないのに自分の望みが分かるなんて、流石は商人だなとムツヤは感心する。
だが、普通の服装で高価な剣だけを握りしめて武器屋に入れば誰だってわかるものだ。
「これ、親の形見の剣なんでず。俺は冒険者になってハーレムを作るために田舎から来ました。だからこれを買って下さい!」
しまった、とモモはまた額に手を充てた。外でハーレムハーレム言わないようにちゃんとムツヤを教育しておくべきだったと。
「ハーレム? ってことはモモちゃんはハーレム要員1号って事!?」
「ち、違う!!」
「モモさんは違いまず、俺も勘違いしでだんですが。本当はオークは女騎士を襲わないし人間とオークが好きになる事は無いんですって」
それを聞いてギルスはまた笑い出す。また今日も退屈な1日になるかと思っていたが、退屈せずに済みそうな予感がした。
「まぁいいや、親の形見ね。そういう事にしておくよ」
ギルスはにやりとモモに意味ありげな笑顔を見せる。
商売をする上でお客と仲良くなることは必要ではあるが、面倒に巻き込まれそうな事は聞かないほうが良い。
そうでないと、善意の第三者で居られなくなってしまう。
「それじゃ査定をするから貸してくれるかなムツヤくん、俺のことはギルスって呼んでくれ」
「あ、それじゃお願いしますギルスさん!」
ギルスはムツヤの剣を手に取るとカウンターの上に置いた。
そして、2人には店の椅子に掛けていてくれと言い残して店の奥へと引っ込んだ。
何が始まるのだろうとワクワクしていたムツヤの前にふわっと香ばしい匂いがする。
「ちょっとあの剣はじっくり見させてもらいたいからさ、親の形見なんだろ? これでも飲んで待っていてくれ」
「すまないな」
そう言ってモモはカップに手を伸ばしたが、真っ黒い液体を見て不思議そうにしているムツヤに気が付いた。
「あれ、もしかしてムツヤくんってコーヒーダメな感じ?」
「いや、ダメっでいうか初めて見たもんで」
「苦いの飲めないと大人になれないよムツヤくん」
そう言ってギルスはカウンターへ戻ってしまった。モモが心配そうに見守る中ムツヤはコーヒーに口を付けてみる。
「にがぁい」
そう言ってムツヤは顔のパーツをクシャッと中心に寄せて、そこそこ良い顔立ちからかけ離れた変な顔を見せると、それが笑いのツボに入ったらしくモモは笑いが堪えきれなくなった。
「む、むふぅやぶっくくく、申し訳無いムツヤど」
「やっぱにがあい……」
何とか取り繕うとしたモモだったが追撃でとどめを刺されてしまい、本格的に笑いだしてしまう。
そんな様子を見て『楽しそうだな』とギルスは思いながら、ルーペや羽箒に磨き布をカウンターの下から取り出して査定を始める。
柄の部分をレンズ越しに眺めたり鞘を磨いたり、そんな様子を二人も遠巻きに見ていたが、一つ一つの動作に何の意味があるのかはわからない。
ギルスは適当な男だが金と商品に関しては真摯だ。
相手によって値段を変えることも相手を騙すこともしない。
だから亜人にはこの店は人気があったのだが、逆に言えばそれ故に一般の客が少ないというのもある。
意味深にモモはそう言うが、ギルスは笑って答える。
「大丈夫大丈夫、俺はこの店で盗みを働く者以外は、冒険者から殺人犯まで誰でもウェルカムだ!」
ギルスは徹底的に客を選ばなかった。誰からでも買うし誰にでも売る。
良くも悪くも大衆とは違う倫理観を持っていた。
「で、その剣を売りたいんでしょ?」
言葉に出してもいないのに自分の望みが分かるなんて、流石は商人だなとムツヤは感心する。
だが、普通の服装で高価な剣だけを握りしめて武器屋に入れば誰だってわかるものだ。
「これ、親の形見の剣なんでず。俺は冒険者になってハーレムを作るために田舎から来ました。だからこれを買って下さい!」
しまった、とモモはまた額に手を充てた。外でハーレムハーレム言わないようにちゃんとムツヤを教育しておくべきだったと。
「ハーレム? ってことはモモちゃんはハーレム要員1号って事!?」
「ち、違う!!」
「モモさんは違いまず、俺も勘違いしでだんですが。本当はオークは女騎士を襲わないし人間とオークが好きになる事は無いんですって」
それを聞いてギルスはまた笑い出す。また今日も退屈な1日になるかと思っていたが、退屈せずに済みそうな予感がした。
「まぁいいや、親の形見ね。そういう事にしておくよ」
ギルスはにやりとモモに意味ありげな笑顔を見せる。
商売をする上でお客と仲良くなることは必要ではあるが、面倒に巻き込まれそうな事は聞かないほうが良い。
そうでないと、善意の第三者で居られなくなってしまう。
「それじゃ査定をするから貸してくれるかなムツヤくん、俺のことはギルスって呼んでくれ」
「あ、それじゃお願いしますギルスさん!」
ギルスはムツヤの剣を手に取るとカウンターの上に置いた。
そして、2人には店の椅子に掛けていてくれと言い残して店の奥へと引っ込んだ。
何が始まるのだろうとワクワクしていたムツヤの前にふわっと香ばしい匂いがする。
「ちょっとあの剣はじっくり見させてもらいたいからさ、親の形見なんだろ? これでも飲んで待っていてくれ」
「すまないな」
そう言ってモモはカップに手を伸ばしたが、真っ黒い液体を見て不思議そうにしているムツヤに気が付いた。
「あれ、もしかしてムツヤくんってコーヒーダメな感じ?」
「いや、ダメっでいうか初めて見たもんで」
「苦いの飲めないと大人になれないよムツヤくん」
そう言ってギルスはカウンターへ戻ってしまった。モモが心配そうに見守る中ムツヤはコーヒーに口を付けてみる。
「にがぁい」
そう言ってムツヤは顔のパーツをクシャッと中心に寄せて、そこそこ良い顔立ちからかけ離れた変な顔を見せると、それが笑いのツボに入ったらしくモモは笑いが堪えきれなくなった。
「む、むふぅやぶっくくく、申し訳無いムツヤど」
「やっぱにがあい……」
何とか取り繕うとしたモモだったが追撃でとどめを刺されてしまい、本格的に笑いだしてしまう。
そんな様子を見て『楽しそうだな』とギルスは思いながら、ルーペや羽箒に磨き布をカウンターの下から取り出して査定を始める。
柄の部分をレンズ越しに眺めたり鞘を磨いたり、そんな様子を二人も遠巻きに見ていたが、一つ一つの動作に何の意味があるのかはわからない。
ギルスは適当な男だが金と商品に関しては真摯だ。
相手によって値段を変えることも相手を騙すこともしない。
だから亜人にはこの店は人気があったのだが、逆に言えばそれ故に一般の客が少ないというのもある。