魔人と少女 2

文字数 746文字

 ラメルは、ぽかんとした表情で少女を見つめた。

「殺して?」

 助けての聞き間違いかと思ったが、聞き返すと少女は食い気味にまた言葉を放つ。

「お願いです!! 殺して下さい!!」

 うーんと上を見上げてラメルは何かを考えていた。

「キミ、不思議ね、魅了も効かないし、助けてじゃなくて殺してって」

 伸ばした右手にオレンジ色の光を溜め、少女に向かってかざした。

 少女は目を瞑って歯を食いしばる。やっと楽になれそうだが、やはり怖いものは怖い。

「やーめた。何で私が亜人の命令を聞かなきゃいけないの」

 ラメルは少女に近付いて、飴細工を壊すかのように手で鎖をパキパキと割った。

「それに、魅了が効かない原因も知りたいし。いいわ、あなたこの城を案内してよ」

 手足が自由になった茶髪の少女は、頭の上の狼のような耳を倒して言う。

「あ、案内って言っても……、私、ここから出た事が無くて」

「じゃあ、私と一緒に探検しましょ? キミ、名前は」

「ミシロ、です」

「ふーん。それじゃ行こうか」

 ラメルは光の射す方へ歩いて行く。ミシロも後を付いて行く。

 何年ぶりかの光をミシロは浴びた。それと同時に涙が出てしゃがんで泣いてしまう。

「何で泣いているの?」

 不思議そうな顔をするラメルにミシロは答えた。

「やっと、やっと出られた、やっと……」

 しかし、次の瞬間。ミシロは全身に氷水を浴びたような気持ちになる。

「ラメル様」

 その声は間違いない。城主様の声だ。

 ミシロの体はガタガタと震えた。過呼吸が起きて立っていられない。

「何? こいつが恐いの?」

 ラメルはミシロに問う。それに対して首を大きく降って肯定した。

「じゃあ、殺しちゃえば?」

 ラメルは飾られていた剣の前までスタスタと歩くと、手に取ってミシロへ投げてよこした。


(イラスト:餅田いずみ先生)
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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