元勇者 2

文字数 996文字

 ムツヤは咄嗟(とっさ)に防御壁を繰り出すが、矢はムツヤの横を飛び去っていく。

 その矢はオオムカデの左目を射抜き、そこを中心に光の玉が現れ、頭をえぐる。たまらず天高く頭を上げた。

「キイイエエエエ!!!」

 そんな鳴き声がしたかと思うと、ドサリと倒れて肉体が崩れていき、光とともに消えて行く。

「はは、凄いな」

 トチノハはそう言った後、オオムカデの頭へ走り、敵を確認しに行く。ムツヤもその後を着いて行った。

「キエーウの奴、あの光に巻き込まれて消滅したみたいだね」

 淡々とトチノハは言う。キエーウのメンバーではあるが、また裏の道具で人が死んだことにムツヤは少し胸が痛んだ。

「ほら、返すよ。急に奪って悪かったね」

 トチノハは弓と矢を手渡す。無言でムツヤは受け取り、トチノハの顔を見た。

「そんな顔しなくてもいいよ。私は君の敵じゃない」

「ムツヤ!!」

 ぞろぞろとアシノ達もやって来た。そしてワインボトルをトチノハに向ける。

「ムツヤ、こいつ等を拘束するぞ」

「まぁまぁ、待って下さいよアシノさん」

 キヌが笑顔を作ったまま喋りだした。

「俺達は確かにお尋ね者かもしれません。ですが今、俺達を捕まえて良いことがありますかね?」

「どういう事だ?」

 アシノは警戒したまま話を聞く。

「俺達はこんな風にキエーウの残党やら、それに近い、裏の道具を使って良からぬことをしようとしている奴らを追っています」

「だから見逃せと?」

 そこでトチノハが口を開く。

「アシノ様、あなたは何のために勇者をしていますか? 誰を守るためですか?」

「元勇者に説教されてもねぇ」

「私は今でも、心は勇者であるつもりです。そして私は亜人を守るため、亜人と人が共に生きていけるために勇者をしています」

 トチノハの言葉を聞いてアシノはふっと笑う。

「亜人を守るためだったら何でも許されると? 少女を人質にすることも、国王の首を狙うことも?」

「えぇ、強引かもしれませんが」

「ダメだな、危険思想だ」

 アシノはちらりとムツヤを見る。

「あー、待って下さいアシノさん。俺達じゃムツヤくんに勝てないのは分かってます。もう少し話だけでもさせて下さい」

 キヌは追い込まれているというのに相変わらず笑顔だ。

「単刀直入に言ってくれ」

「それじゃ2つ提案が、1つはこの場を見逃してくれること。そして、もう1つは」

 キヌは少し間を置いて言った。

「皆さんが使っている探知盤を、俺達にも貸してください」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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