魔人ナツヤ 7

文字数 1,131文字

 ナツヤは再び翼竜を召喚して上空へ羽ばたき、火の玉をサツキに向かって吐かせた。

 それに対し、剣を数回ふるい火の玉を消滅させ、サツキは魔剣で上昇気流を作り、空へと舞い上がる。

 二刀流のサツキは腕を開き、思い切り魔力を込めた。剣には竜巻がまとわり付き、竜の体を抉る。

 たまらず咆哮を上げた後、竜は消滅した。落下するサツキは地面に向けて風を放ち、フワリと着地する。

 そんな芸当が出来ないナツヤは地面に叩きつけられそうになるも、またスライムに包まれ無傷だった。

「やりますね」

 土埃の中からナツヤが現れた。そして、手を天高く上げる。

 次の瞬間だった。カマキリやアリ、ハチなど虫を模した巨大な魔物達がサツキを取り囲む。

「っく……」

 一体一体戦えば、余裕で勝てるだろうが、いくらなんでも数が多すぎる。

 そんな時だった。虫の魔物が弾け飛んだ。その方向を見ると。

「遅くなりました」

 元勇者トチノハと仲間達が立っていた。

「トチノハさ……、トチノハ!! 何をしに来たのですか!?」

 一応、敵同士ということになっているので周りの目を気にしてサツキは言う。

「まぁまぁ、今は魔人に集中しましょう」

 トチノハの仲間であるエルフの『キヌ』がサツキに言った後で、トチノハはナツヤに向かって語りかける。

「ナツヤさん……。で良かったかな? 実は私も虐げられていた亜人と共に国を変えようとしていたんですよ」

 協力関係にあるとは言え、いつトチノハが裏切ってもおかしくはない状況だ。

 そんな中、そのような事を言い出したのでサツキはまさかと思った。

「確かに今の国王は牛の糞以下です。ですが、あなたのやり方は、あまりにも一般の国民を犠牲にしすぎる」

「黙れ、知ったような口を効くな!!!」

 ナツヤは虫の魔物を仕向けるが、トチノハの爆破魔法で木端微塵に吹き飛んでいく。

「あなたは勇者として止めなくてはいけない」

 トチノハはナツヤに矢を放つと、魔物が前へ出て体で受け止めた。

「サツキさん。狙うなら恐らく本体です。彼は魔物を使う力はあっても、本人はそこまで強くない」

 トチノハの言葉にサツキは軽く頷く。

「面白そうな事になってますねー」

 魔物達を切り裂く稲光。カミクガと聖女クサギもサツキの元までやって来た。

「とにかく魔人に攻撃を入れるぞ!!」

 クサギが全員に支援魔法を掛ける。皆、体が軽くなるのを感じた。

 キヌが矢で魔物を射止め、モモの父親であるオークの『ネック』は大剣で魔物を斬り捨てていく。

 カミクガが道を切り開き、その後ろをサツキとトチノハが走る。

 ナツヤを守ろうと前に出てきた魔物を爆破魔法で消し飛ばし、その空いた隙間からサツキが飛び出た。

 サツキの剣は一直線にナツヤの首を捉え。



 喉仏を貫いて、串刺しにした。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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