それからのこと 1

文字数 968文字

「いーやー!!! おーちーるー!!!」

 塔の最上階から落下し、叫ぶルー。

 先に飛び降りていたモモは背中を引っ張られる感覚を味わった。

 リュックサックから巨大な布が現れ、展開し、落下速度がゆっくりとしたものになる。

 次々に皆のリュックサックから布が現れ、地面への激突を防ぐ。

「はぁはぁ、た、助かったの!?」

 ルーは涙と鼻水を垂らしながら言っていた。

 バサリと布の音を立て、全員が着地する。塔は崩れ落ち始めていた。

「まずいな、お前ら走って逃げるぞ!!」

 アシノの掛け声と共に皆は走り、塔から距離を取る。




 時を同じくして、塔の周辺で裏の魔物と戦っている勇者達。

「な、なんだ!?」

 勇者イタヤは斬り掛かった魔物が急に半透明になり、そのまま消えて驚く。

 周りの魔物達も次々に姿を消していった。

「これは……」

 勇者サツキも魔剣カミカゼを片手に周囲を見渡す。

「決着が着いたみたいですね」

 元勇者トチノハはそう言って塔を見た。




 塔から走り、ムツヤの住んでいた家まで辿り着く。

 そこにはムツヤの祖父……。ではなく、正確には育ての親だったタカクが立つ。

 魔物と同じく、その姿は透けていた。迷い木の怪物と、ノエウ。アラクネのナリアもそれを見つめる。

「じいちゃん!!!」

「ムツヤか……」

 タカクはムツヤをじっと見る。

「じいちゃん!!」

「ムツヤ、お前も知っただろう? 俺はお前の本当の祖父ではない」

 そう言われ、ムツヤは一瞬悲しそうな顔をするが、言った。

「それでも、じいちゃんはじいちゃんだ!!!」

 その言葉を聞いて、タカクはフッと笑う。

「あぁ、ムツヤ。俺にとってもお前は孫だ」

 ムツヤは胸がいっぱいになり、泣いた。

「マヨイギ、ノエウ、ナリア。お前達と過ごした時も楽しかったぞ。ムツヤをよろしく頼む」

「任せなさいタカク」

 マヨイギが返事をし、タカクは次にアシノ達に頭を下げて言う。

「皆さん、ムツヤをどうかよろしくお願いします」

「えぇ、かしこまりました」

「はい!!」

「オッケー任せて!!」

 モモ、ユモト、ルーはそう返事をし、アシノとヨーリィは小さく頷いた。

「それじゃ、そろそろだな」

 タカクはスゥーッと姿を消していってしまう。ムツヤは下を向いて涙を堪えていた。

 無理もない。育ての親と、自分を見守っていてくれた存在を、自分の手により同時に()くしてしまったのだから。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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