下剋上 3

文字数 1,126文字

「外って言ったって、この部屋には鍵が掛かってるし、もし見つかったら……」

「大丈夫だよ、少し見るだけだから」

 ナツヤは悩んだが、フユミトにそう言われると、不思議と外を見たくなった。

「わかった」

 他の労働者を起こさないように扉の前へ行くと、フユミトがドアノブを握る。

「解錠せよ」

 ガチャンと音がなり、鍵が開く。こっそりと外へ抜け出し、次の瞬間には空に目が移っていた。

 夜空には流星群が飛び交っている。しかし、どうにも距離が近い気がした。

 そして、その星だと思っていた何かが1つこちらへ近付いてくる。

 何が起こったのか分からないナツヤは「え、えっ!?」と声を出してあたふたとした。

 だが、こちらへやって来る頃には、その何かは速度を落とし、ゆっくりと降って落ちる。

 ナツヤの足元には1本の杖が転がっていた。

「ナツヤ、それ拾ってみたら?」

「な、何だよこれ、何が起きてんだよ!!」

 パニックになるナツヤと対象的に、フユミトは笑顔で涼しい顔をしている。

「これ、触って大丈夫なのか?」

 ナツヤは恐る恐る杖を手に持つ。その瞬間、後ろから声がした。

「何事かと思って来てみたら、テメーら抜け出しやがったな!!」

 ナツヤはその聞き覚えのある声にビクリとした。この現場の監督と、護衛の元冒険者が数人、剣を構えてこちらに向かって来ている。

「こ、殺される!! フユミト……」

 すがるような顔でフユミトを見た。

「お、お前のせいでこうなったんだぞ!! お前強いんだからどうにかしろよ!!」

「相手は剣を持ってる。魔法も使えるみたいだ、僕じゃ勝てないよ」

「そんな!!」

 そう言っている間にもずんずんとこちらへ向かってきている。そんな時、フユミトが言った。

「祈ってみたら? その杖を握ってさ」

 祈る? 馬鹿かと思った、神なんて居ない。神が居たら自分のような人生を歩む人間なんて居ない。

「ぐ、くそ!! 誰か助けてくれ!!!」

 ナツヤが叫ぶと、杖が光り、屈強そうな熊型の魔物、カマキリの魔物、その他にも魔物たちが現れた。

「なっ!!」

 ナツヤと敵は同じ反応をした。どういう事だと。魔物達はナツヤを背にして取り囲んだ。

 絶体絶命かと思っていたが、どういう事か、熊型の魔物が突進し、いともたやすく監督を鋭い爪で引き裂いた。

「な、何だこれ!! 何だ!!」

 護衛達はその光景を見て慌てふためく。カマキリ型の魔物も羽ばたいて護衛の元へと向かった。

「っく、この!!」

 剣を構えて対峙するが、大鎌で袈裟斬りに真っ二つにされる護衛。それを見て他の護衛は逃げ出そうとするが、狼型の魔物に追いかけられ、食い散らかされた。

「ふ、フユミト、これ、コレ何なんだ!?」

「分からないけど、僕が思うに、その杖のせいじゃないかな?」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み