その心は 5

文字数 827文字

「えーっと、それじゃ、お願いじまず」

「は、はい、わかりました!」

 仲間内で付き合いの一番長い二人だったが、何だかギクシャクしたやり取りを交わす。

「そ、それじゃいきますよ!」

「はい」

 モモはスープをスプーンで(すく)い、ムツヤの口元へと運んだ。

「んむっ、美味しいです」

「そ、そうですか! それは良かった!」

 照れを隠しながらモモは笑顔で言う。その後もパンや肉などをゆっくり時間を掛けて食べさせた。

「ごちそうさまでした」

 そう言った後に少し力を取り戻したムツヤは立ち上がろうとする。

「む、ムツヤ殿!? 無理をなさっては……」

「ですけど、そのーちょっと……」

「何か御用がありましたら私がどうにかしますので」

 モモに言われ、ムツヤは下を向いてもじもじとした後に呟いた。

「その……、トイレ……」

「あっ!!」

 互いに気まずくなる。だが、どうしたものかとモモは考えた。

「そうですね……、ユモトにトイレまで支えてもらうよう言ってきます!」

「ありがとうございまず」

 仮にも女である自分が付いて行ったらムツヤ殿も嫌だろうと思い、モモはユモトを呼びに行った。

 話を聞いたユモトがムツヤの寝る部屋までやって来る。

「ムツヤさん、失礼します」

 ノックをして部屋に入るユモト。ムツヤはベッドに腰掛けていた。

「ユモトさん、ずみまぜん……」

「いえ、良いんですよ!! 一緒に行きましょう」

 ユモトはムツヤの肩を支える。

 プルプルと震える足で歩くムツヤ、密着されたユモトは何だか気恥ずかしくなってしまった。

「ムツヤさん、着きましたよ」

「はい、ありがとうございまず」

 扉を開けてムツヤはよろよろと自力で歩いて中へと消えていく。

 ユモトは少し離れてムツヤを待つ。しばらくして扉が開いた。

「ユモトさん、またお願いじまず」

「はい!」

 ユモトは不謹慎かもしれないが、こんな小さな事でも、ムツヤが頼ってくれて、その力になれることを嬉しく感じてしまう。

「また困ったことがあったら言って下さいね!」

「わがりまじだ」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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