生と死と 4

文字数 954文字

「ううぅ……、寒いー」

 ルーは厚着をし、帽子もいつもの三角帽ではなく、毛糸の帽子を被っていた。

「裏の道具の反応はここから北にあります」

 ユモトはそう言って歩き始め、その後をムツヤ達も付いていく。

 途中の魔物はムツヤが適当に蹴り飛ばし、反応まであと僅かと言った距離になる。

 そこでムツヤ達は、目の前の光景を見てとっさに身を隠した。

「誰かいますね」

 モモが白い息を吐きながら小声で言う。

「黎明の呼び手の連中かもしれないな。ムツヤ、声を集める魔法だ」

「わがりまじだ!!」

 ムツヤの魔法によって皆がいる場所に会話が流れ出す。

「こちらが、ルクコエ様です」

「あぁ、あなた様が……」

 ルクコエと呼ばれる者がリーダー格かとアシノは推測を立てる。

「えぇ、そうです」

「お願いします。私に永久の安息をお与え下さい!!」

「良いでしょう。辛かったでしょうね。今、楽になりますからね」

 次の瞬間、ムツヤがハッと驚く。

「人の気配が……、1つ減りまじだ」

「なっ!!」

 アシノはこの会話とムツヤの言葉で察する。

「このルクコエって奴。目的は不明だが、人殺しだな」

「えぇ、そうみたいね」

 ルーも同じ考えをしていた。それを聞いてムツヤが飛び出でようとする。

「待てムツヤ!! まだ相手の能力がわからない!!」

「でも、人殺しはダメです!! 止めないと!!」

「そうだが、今は待て!!」

 ムツヤは悔しそうな顔をしてアシノの言葉に従った。

「ムツヤ、相手の生命を奪う裏の道具はあったか?」

「人に使ったことはないでずが、魔物相手にだったらありまずけど……」

 歯切れが悪そうにムツヤは続ける。

「沢山ありすぎで、わがりまぜん」

「そうか……、まぁそうだよな……」

 アシノは腕を組んで言う。また洞窟からの会話が流れた。

「ルクコエ様!! 私も、私もこんな辛い人生は散々です!! どうか死をお与え下さい!!」

「えぇ、わかりました。安らかなる死を……」

 また人の気配が消える。

「死んでいく奴ら……、自分から望んでいるのか?」

「わからないわ、心を操られているかもしれないし……」

 悩む暇も無く、次の者が名乗りを上げた。

「お、俺も!! 俺もお願いします!!」

「このままじゃ犠牲者が増え続けるな」

 アシノの言葉にムツヤは居ても立っても居られなくなる。

「俺が、俺が止めに行きまず!!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み