千年前の物語 5

文字数 904文字

 宿屋に居たサズァンは、ソイロークからの使いの者により、手紙を受け取っていた。

 式典が開かれることを知ったサズァンは、くすりと笑う。

「ソイローク様、照れてるんだろうなぁ」

 黒魔術師の末裔である自分は表舞台に立つわけにはいかない。

 だが、いずれソイローク様がそんな世界を変えてくれるだろうと信じている。

 三日後の式典では、王都がお祭り騒ぎになった。

 そこら中で貴重な酒を持った者達が肩を組んで飲み交わし、ソイロークとニシナーのパレードを見ている。

 戦う時の勇ましさはどこへやら、ソイロークは恥ずかしそうにしながら手を振り続けていた。

 城の中でソイロークが王直々に勲章と感謝の言葉を受け取り、式典が終わるが、騒がしさは夜遅くまで続く。

 ようやく国の復興が始まる。魔人と魔物の恐怖に人々は力を合わせて打ち勝ったのだ。



 そして、一ヶ月が過ぎた。



「どうして、どうしてこんな事になってしまったんだ!!!」

 ソイロークは悔しさで地面を叩いた。

 復興の最中、隣国からの宣戦布告があったのだ。

「ソイローク……」

 ニシナーが心配そうに見つめる。

 戦力になりそうな者は国境に招集された。もちろん勇者であるソイロークも例外ではない。

「俺は、俺は、人々が手を取り合って生きていける世界を目指していた。その為に戦った……。戦ったのに……」

 悔し涙が流れそうだった。

「俺は、人を斬りたくない。俺の敵は魔人と魔物だけだ……」

「ソイローク。ですが、ここで侵略を防がねば、より多くの自国民が犠牲になります」

 ニシナーの言葉にソイロークは声を荒らげる。

「わかっている!! わかっているが!!」

 彼は少し沈黙を置いてから、冷静さを取り戻す。

「すまない。少し感情的になった」

 サズァンは二人のやり取りを見ていることしか出来なかったが、口を開く。

「私も、同じ気持ちです。平和のために戦っていたのに、こんな事になるなんて……」

「私もです」

 ニシナーもソイロークやサズァンと同じ考えだった。

「奴らは国が疲弊し、魔人が倒されるのを待っていたんだろう……。俺がした事は間違っていたのか……?」

「間違ってなんていません。魔人があのままでいれば国は消えていました」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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