リースと共に 1
文字数 1,450文字
「駄目ですよ!! モモざん!!」
「ムツヤ殿、これは私の覚悟です」
ムツヤも止めに入ろうとするが、当の本人であるモモに止められてそれ以上歩けなくなってしまう。
見ているユモトは心臓の鼓動が耳で感じられるほどにバクバクと脈を打ち始めていた。
「わがっだ」
床に置かれた剣にリースは手を伸ばしてしっかりと掴む。そして立つと剣を鞘から抜いた。
仲間達は無言でそれを見守る。見ることしか出来なかった。リースは両手でしっかりと柄を握る。
リースが剣を振り上げると同時にムツヤは走り出そうとしてしまったが、その前にリースは剣を下ろした。
「……でぎねぇ、わたじにはでぎねぇ。オークはお母ちゃんとお父ちゃんの敵なのにでぎねぇ」
するりと手から落ちた剣は床に突き刺さる。そのままリースはしゃがんで泣き出す。
涙の理由は自分の情けなさと、怖さと、怒りと、様々な感情がぐちゃ混ぜになって分からなかった。
モモはスッと立ち上がって振り返る。そして柔らかな笑顔をしてリースへと手を差し伸べた。
「私達と一緒に来ないか? これ以上こんな憎しみ合う世界を止めるために。それに……」
剣をチラリと見てモモは言う。
「もし気持ちが変わったらいつでも私を斬ってくれて構わない、一緒に居たほうが良いはずだ」
リースはモモを見上げてから、その差し伸べられた手を見つめる。
震えながらも右手を伸ばす、そして手が触れ合った時モモは強く握り、リースを立ち上がらせた。
仲間達は安堵してふぅーっと息を吐いた。ヨーリィは相変わらず何を考えているのかわからない無表情だったが。
「あのオカマは口封じのためにお前を殺そうとしていた。もう既にお前はキエーウから命を狙われる側になったんだ。だが安心しろ、私達が絶対に守ってやる」
アシノも勇者らしい事を言う。リースは頭を下げて言った。
「不束者ですがよろじぐお願いします」
そこは真っ暗な空間だった。寝静まった後に目が覚めてしまったのかと一瞬思う。
しかし、違和感に気づく。私は自分の足で見えない床の上に立っていた。
「いでええええええ」
目の前に急に現れた男がそんな言葉を言いながら振り返る。それは昨日切り捨てたうちわを使う男だ。
「なっ、あっ」
私は全身の血が一気に抜けたような脱力感を覚えた。
男は血を流しながらコチラを見ている。思い出す、あの時の、初めて人を斬り殺した時の事を。
「あああああああ、はっ」
夢と現実の狭間でモモは大声を出して起きてしまった。ルーは爆睡していたが、アシノはその声を聞いて起き上がる。
「何かあったか!?」
「あ、あの、いえ、変な夢を見ただけで何でもないです……」
冷や汗をびっしょりとかきながらモモは言う。月明かりでその姿はよく見えなかったがアシノはモモの夢に心当たりがあった。
「昨日の戦いでも夢に出たか?」
「えっ? あ、はい……」
当てられたことにモモは一瞬びっくりしたが、弱々しく返事をする。
「珍しいことじゃない。初めて命のやり取りをすると、ほぼ必ずと言っていい程、数日の内に夢に出る。亡霊の仕業だなんて言う奴もいるがな」
「そうですか……」
モモはボーッとした心のままで答えた。
するとアシノが歩いてコチラへやってくる。その様子も心ここにあらずといった感じで見ていた。
「お前は良い戦いをした、恐い気持ちは私も分かる。私もそうだった」
「アシノ殿……」
そしてモモの頭を優しく撫でる。
そんな事がある前に少し時間が戻り、リースを尋問し終えた後、アシノはやって来た治安維持部隊に交渉をしていた。
「ムツヤ殿、これは私の覚悟です」
ムツヤも止めに入ろうとするが、当の本人であるモモに止められてそれ以上歩けなくなってしまう。
見ているユモトは心臓の鼓動が耳で感じられるほどにバクバクと脈を打ち始めていた。
「わがっだ」
床に置かれた剣にリースは手を伸ばしてしっかりと掴む。そして立つと剣を鞘から抜いた。
仲間達は無言でそれを見守る。見ることしか出来なかった。リースは両手でしっかりと柄を握る。
リースが剣を振り上げると同時にムツヤは走り出そうとしてしまったが、その前にリースは剣を下ろした。
「……でぎねぇ、わたじにはでぎねぇ。オークはお母ちゃんとお父ちゃんの敵なのにでぎねぇ」
するりと手から落ちた剣は床に突き刺さる。そのままリースはしゃがんで泣き出す。
涙の理由は自分の情けなさと、怖さと、怒りと、様々な感情がぐちゃ混ぜになって分からなかった。
モモはスッと立ち上がって振り返る。そして柔らかな笑顔をしてリースへと手を差し伸べた。
「私達と一緒に来ないか? これ以上こんな憎しみ合う世界を止めるために。それに……」
剣をチラリと見てモモは言う。
「もし気持ちが変わったらいつでも私を斬ってくれて構わない、一緒に居たほうが良いはずだ」
リースはモモを見上げてから、その差し伸べられた手を見つめる。
震えながらも右手を伸ばす、そして手が触れ合った時モモは強く握り、リースを立ち上がらせた。
仲間達は安堵してふぅーっと息を吐いた。ヨーリィは相変わらず何を考えているのかわからない無表情だったが。
「あのオカマは口封じのためにお前を殺そうとしていた。もう既にお前はキエーウから命を狙われる側になったんだ。だが安心しろ、私達が絶対に守ってやる」
アシノも勇者らしい事を言う。リースは頭を下げて言った。
「不束者ですがよろじぐお願いします」
そこは真っ暗な空間だった。寝静まった後に目が覚めてしまったのかと一瞬思う。
しかし、違和感に気づく。私は自分の足で見えない床の上に立っていた。
「いでええええええ」
目の前に急に現れた男がそんな言葉を言いながら振り返る。それは昨日切り捨てたうちわを使う男だ。
「なっ、あっ」
私は全身の血が一気に抜けたような脱力感を覚えた。
男は血を流しながらコチラを見ている。思い出す、あの時の、初めて人を斬り殺した時の事を。
「あああああああ、はっ」
夢と現実の狭間でモモは大声を出して起きてしまった。ルーは爆睡していたが、アシノはその声を聞いて起き上がる。
「何かあったか!?」
「あ、あの、いえ、変な夢を見ただけで何でもないです……」
冷や汗をびっしょりとかきながらモモは言う。月明かりでその姿はよく見えなかったがアシノはモモの夢に心当たりがあった。
「昨日の戦いでも夢に出たか?」
「えっ? あ、はい……」
当てられたことにモモは一瞬びっくりしたが、弱々しく返事をする。
「珍しいことじゃない。初めて命のやり取りをすると、ほぼ必ずと言っていい程、数日の内に夢に出る。亡霊の仕業だなんて言う奴もいるがな」
「そうですか……」
モモはボーッとした心のままで答えた。
するとアシノが歩いてコチラへやってくる。その様子も心ここにあらずといった感じで見ていた。
「お前は良い戦いをした、恐い気持ちは私も分かる。私もそうだった」
「アシノ殿……」
そしてモモの頭を優しく撫でる。
そんな事がある前に少し時間が戻り、リースを尋問し終えた後、アシノはやって来た治安維持部隊に交渉をしていた。