魔人と少女 4

文字数 783文字

 ラメルは剣をくるくると回して、刃の部分を握り、柄の部分をミシロに差し出す。

 それと同時に、城主が部屋の中へと入って来た。ミシロはまた震えだす。

「1分」

 そう突然言われてミシロは前を見る。魔人は冷たい顔をしていた。

「1分以内にアイツを殺せばキミの勝ち。見逃してあげる。出来なかったらキミの負け、この場で殺す」

 ミシロはカチカチと歯を鳴らして必死に意識を保っていた。

「握って」

 柄がぐいっと差し出される。

「握れ」

 命令され、やっとミシロは両手を出して、グッとそれを握った。

「それじゃ、よーいスタート」

 ミシロはベッドから立つことも出来ないでいる。はぁはぁと荒い息だ。

「ちょっとサービスしてあげる」

 ラメルが城主の背後に立って言うと、遠くを見つめていた城主がハッと意識を取り戻す。

「な、なんだ!! ……っ体が!?」

 体は動かないままだが、声を聞いてミシロはギュッと目を瞑った。

「何故お前がここに!?」

 地下から出歩いているミシロを見て、自分の体よりも驚きが勝ってしまった。

「お前の仕業か!? いや、お前ごときがこんな事出来るはずもないか……。ともかく穢らわしい体で私の寝室を穢すな!!」

 ミシロが握る剣もお構いなしに罵声を浴びせる。その時、ミシロが立ち上がった。

「おい、剣を置け、何をするつもりだ、やめろ!!」

 剣を振りかざそうとして、ミシロは固まる。

「……出来ません。出来ません……」

「そう、じゃあ死ね」

 ラメルが右手に魔力を込め、声で城主がその存在に気付いた。

「何だ、誰か居るのか!? どうなっているんだ!?」

「弱いキミはこうやって奪われ奪われ、惨めに死ぬんだよ」

 ラメルの「奪われ」という言葉でミシロは思い出す。

 そうだ、この男は私から全てを奪った。家族も、尊厳も、未来も!!

 傷だらけの少女の目には覚悟が宿った。自分のことだけなら許せる。

 だけど、こいつは……。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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