おっさん勇者 3

文字数 1,140文字

「何か今までの人生観がひっくり返そうだよ」

 いつものように大きな笑いではなく、小さくはははとイタヤは笑っていた。

「それで、イタヤさん達にはそれぞれ合う武器を選んで頂きたいと思います」

「裏の道具か、使いこなせるかな」

「なーに不安になってんだ。勇者のくせに」

 ウリハが言うと、イタヤはふんっと胸を張り直した。

「そうだ、俺は勇者だ。どんと来い裏の道具!!」

「それで、イタヤさんはどんな武器が得意なんですか?」

 ギルスが聞くと、イタヤは返事をする。

「俺は剣だな、そんでもって光属性の魔法が得意だ!」

「光…… 剣…… あっ! そうだ!」

 ムツヤは何かを思い出して鞄の中を漁った。

「これなんてどうですか?」

 ムツヤが出したのは一振りの剣だった。だいぶ骨董品に見える。

 それを受け取った時イタヤは違和感を覚えた。だいぶ軽いなと。そういう剣なのかと思って引き抜いて、驚く。

「なんじゃこりゃ」

 それは、剣と言うよりも、長めのナイフぐらいの長さしか無かった。

「これ、魔力を込めるとちゃんと剣になるんですよ!」

「へー」

 試しにイタヤが魔力を込めると、鞘に丁度収まるぐらいの長さの光が、剣の形になる。

「あー、何だっけ…… そうだ、多分伝承通りなら『聖剣ロネーゼ』だ!」

「聖剣ロネーゼ? 聞いたことあるが、これがか?」

 イタヤが聞き返すとギルスは答えた。

「歴代の勇者や使い手によって使われ続けて、すり減ってそれぐらいの長さになったって伝説があります」

「なるほどな」

 そう言いイタヤは剣を鞘に収める。

「次はそちらのお嬢さん達だな」

「お嬢さんだってよ」

 イタヤが笑いながらウリハを見ると、また肘で一撃食らっていた。

「私は、色んな属性魔法を使う。だから出来れば一つの属性に特化していない剣があれば、ありがたいのですが」

「うーんそれならば……」

 ムツヤが次々と10本ほど剣を取り出した。ウリハは手に取り、剣を振り1本1本吟味する。

「これが一番しっくりくるかな」

「見たこと無い剣だね」

 ギルスも知らない剣だったが、上物であることは確かだ。

「切れ味も良さそうだし、魔力の伝導率もいい」

「次はサワの杖だな」

 杖もウリハが選んだ時のように何本か取り出して、その中から気に入ったものを選んでもらった。

 また名前も知らない杖だったが、年代物であることは分かる。

 防具はそれぞれ既に1級品を持っていたので、武器だけ裏の道具を装備することになった。

「さてと、武器も手に入れたし、出発するか!!」

「出発ってたってどこによ」

「あっ…… 知らない!!」

 イタヤとウリハのやり取りを見て皆笑っていた。場を和ませるには適任だろう。

「色々な街を巡って魔人の手がかりを探すしか無いですね」

 アシノが言うと皆頷いて一番近くの街まで馬車を走らせた。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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