飲みに行こう(大人のお店) 5

文字数 1,465文字

「それでぇー、ムツヤさんはしゅごいんれすよぉー」

「ユモトさんのがしゅごいれすよぉー」

 数杯酒を飲んだだけで2人はすっかり出来上がっていた。

「うんうん、すごいのねー」

 キャストの女性はそう言って2人の頭を撫でている。

「ほら、お水飲んでね」

「いただきらす!!」

 ムツヤは一気に水を飲み干すとソファにドカッと座った。

「うーん、二人共飲みすぎちゃったかな?」

「そうれすねぇ、飲みすぎちゃったかもしれません」

「ほら、フルーツ食べて、お水飲んで」

「いただきらす!!」

 ユモトはぶどうをもにゅもにゅと食べて水を飲んだ。

「まだ時間あるけど、これ以上酔っ払ったら仲間の人達が心配しちゃうかもね」

「はい、ずみまぜん、帰りまず!!」

「うんうん、また来てねー! お客様お帰りでーす」

 ムツヤとユモトは一緒に飲んでいた女性陣に寄り添われて店を後にした。

 良心的な店らしく、ボッタクられることもなく無事に帰って気持ちよく熟睡できる。そう考えていたが……。


 2人は酔ったままなんとか宿屋へと向かう途中でばったりとモモ達に出くわした。

「ムツヤ殿!? それにユモトも、偶然ですね」

「ももしゃーん、どうもー」

「あらー、だいぶ酔っちゃってるわね」

 ケラケラとルーが笑っていると、心配そうにモモは近づく。

「大丈夫ですか? 青い薬を飲まれたほうが……」

 次の瞬間、モモは何かを二人から感じ取った。女物の香水の香りだ。

「……ムツヤ殿、ユモト? どこで飲まれていたのですか?」

 顔は笑っているが目が据わっている。ユモトは危機を察知した。

「え、えーっとですね」

「女の人が居るお店で飲んでましたー」

 あ、しまったとユモトは思う。

「へぇー、そうですか……。それは良かったですねぇ」

 モモは近づいて、両手でムツヤのほっぺをつまんで引っ張った。

「いらい、いらいですモモしゃん!!」

「あらら、モモちゃんも結構酔ってる?」

「酔い醒ましですよムツヤ殿!!」

 そんなやり取りをやれやれとアシノは眺めていた。街の夜はこうして終わっていく。



 朝になり、ユモトとムツヤは目が覚めた。酔いで昨日のことはあまり覚えていないが、何だかほっぺたが痛い気がした。

 ヨーリィは勝手にムツヤの隣に寝て手を繋ぎ、魔力を補給している。

「おはようございます、ムツヤさんヨーリィちゃん」

「おはようございまず」

「おはよう、ユモトお姉ちゃん」

「だからお姉ちゃんじゃないからね?」

 いつもの様なやり取りをして部屋を出た。ロビーには女性陣が集まって紅茶を飲んでいる。

「おそいぞー、女性を待たせるなんてなっとらんな君達は」

 ルーがそう言って怒った風を装っていたが、その裏ですました顔をしているモモの方が何故か怖く見えた。

「あのー、みなさんおはようございまず」

「ムツヤ、ゆうべはお楽しみでしたね」

 アシノが言うとムツヤは頭に疑問符が浮かんだ。

「あー、昨日は確かに楽しかったです!!」

「お前は……」

 こいつは皮肉も分からんのかと思い、モモの方を見ると無表情で紅茶を飲んでいる。

「む、ムツヤさん、とにかくモモさんに謝って!!」

「え、俺ですか!?」

「僕も一緒に謝りますから!!」

 ユモトに言われてムツヤはモモの元へと歩いて頭を下げる。

「モモさん、俺また何かやっちゃったみたいで……。すいまぜんでじだ!!」

「別に、怒ってなどいませんよ」

 この場にいる全員が嘘だと思った。

「モモさん、昨日はつい、男の人について行っちゃってその……」

「良いんだユモト、それよりギルスから連絡が入っている」

 モモの機嫌は時間が解決してくれるのを待つしかなさそうだ。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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