その心は 4

文字数 1,085文字

「それじゃ後は……」

 アシノが言うと同じく、皆が激しい音を立てるムツヤの方を見る。

 仮に本体と同じ力を持つとすれば、一番厄介なのはムツヤの影だ。

 一つ疑問が残る。ムツヤは今までどうやってこの影に勝っていたのだろうかと。

「使うじかないか!!」

 ムツヤは青いオーラを纏い、身体能力を上げる。すると、影を少しずつ圧倒し始めた。

「焼け石に水かもしれんが、遠距離攻撃でムツヤを援護してくれ!」

「わかったわ!」

 ルーは精霊を向かわせ、ユモトは雷と炎を飛ばす。ヨーリィは近付ける所まで近付き、木の杭を投げていた。

 アシノの言う通り、精霊は剣で薙ぎ払われ、魔法は直撃してもダメージを受けていないようだ。

 だが、一瞬の隙は作れた。ムツヤは影の右腕を落とすことに成功する。

 左手だけで剣を振るうムツヤの影、明らかに力が落ちていた。

 ムツヤは影の剣を弾き、そのまま横薙ぎに胴体を斬り裂く。

「よしっ!」

 消滅する影を見てアシノが言った。だが、ムツヤもそれを見届けると、片膝を地面に着いてしまう。

「ムツヤ殿!!」

 モモが駆け寄るとヨロヨロとムツヤが立つ。倒れそうになるが、モモに支えられる。

「例の青いオーラを使ったせいか。薬で治らないんだったな」

「はい、すみまぜん……」

 駆け寄った仲間達に心配をされるムツヤ。申し訳無さそうな顔をした。

「いや、私達も疲労が溜まっていた。この辺りで睡眠でも入れておこう」

 ムツヤのカバンから家が飛び出る本を取り出し、使う。

 モモが部屋に一室にムツヤを運ぶと、ベッドに寝かせた。

 一階ではユモトが料理を作っている。ルーは紅茶を飲みながらクッキーを食べていた。

「いやー、まさか裏ダンジョンでこんな風に(くつろ)ぐとはねぇ」

「お前は気を抜きすぎだ」

 アシノに言われ、ルーはエヘッと舌を出す。

 しばらくすると、ユモトが腕をふるった料理が運ばれる。

「モモ、悪いがムツヤに食べさせてやってくれ」

「え、あ、はっはい!!」

 モモはそう言って料理を持ち二階へと消えていった。

「モモちゃんもムツヤっちの事になると、一人の恋する乙女ねー」

 ルーはニヤニヤしながら言い、料理を口に運んだ。

「ムツヤ殿、失礼します」

 モモは部屋をノックしてムツヤの部屋に入る。

「モモさん」

「ムツヤ殿、お加減はいかがですか?」

 優しい笑顔でモモは尋ねた。

「えぇ、ちょっどだけ使ったので、そんなには大丈夫でず!」

「お料理を持ってきました。体は動きますか?」

 ムツヤは腕を動かそうとするが、プルプルとしている。

「す、すみまぜん……」

「大丈夫ですよ、ムツヤ殿さえ良ければ、その、私がムツヤ殿に食べさせても大丈夫でしょうか?」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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