その心は 9

文字数 1,006文字

 アシノに褒められるが、浮かない顔をするムツヤ。

 それも無理はない。この階段を登ってしまえば、この塔の主であるサズァンが待っているのだから。

「お前ら、覚悟は良いか?」

 扉の前でアシノが皆に尋ねる。

「私はバッチリよー!!!」

 ルー以外は、ゆっくりと頷くことで返事をした。

 長い階段を登る。ムツヤは心臓がバクバクとしていた。

 他の皆も緊張している。どの様にサズァンは待ち構えているのだろうかと。

 最上階らしい立派な扉の前に辿り着く。ムツヤが先頭に立ってその扉を押し開けた。



「やっと登ってきたのね」

 声に仲間達は武器を強く握る。

 暗闇の中で蝋燭(ろうそく)の光を浴び、黄金色に赤みを含ませて照らし出される椅子、そこから誰かが立ち上がるのが見えた。

 それと同時に部屋のシャンデリアが光り、ムツヤ達と相手を明るく照らす。

 一歩一歩、ムツヤ達に近付いてくるその相手は、褐色の肌に長い銀髪。

 目の上や唇。爪は毒々しく紫色で、見覚えのある人物。いや、神。

 その相手はムツヤが初めて出会った女である。邪神サズァンだ。

「お久しぶりね、皆」

 世界を滅ぼすと言っておきながら、サズァンは本当に懐かしむように軽く笑顔を向けてきた。

「久しぶりだな、邪神様よ」

 アシノが言葉を返した。そして続けて言う。

「私はまどろっこしい事が嫌いなんでね、単刀直入に聞く。あんたは本当に世界を滅ぼそうとしているのか?」

 一瞬の間が永遠にも感じられた。ムツヤは(いま)だに間違いであって欲しいと思っている。

「えぇ、私は世界を滅ぼすわ。その為にこの塔にずっと居たんだもの」

「やはりか……」

 話を聞いてアシノはキッとサズァンを睨みつけた。

「サズァン様、何で世界を滅ぼそうなんて考えているのかしら?」

 ルーの問いかけにサズァンは、また話し始める。

「あのね、私はあなた達とは戦いたくないの」

 会話が噛み合わない返答だった。

「あんたが何を考えているのか分からないが、戦いたくないなら今すぐ裏ダンジョンを引っ込めて、世界を滅ぼそうなんて馬鹿な考えをやめろ」

 アシノが言うと、サズァンは寂しそうに笑う。

「ごめんなさい。もう、私にもそれは出来ないの」

「どういう事なんですか!? サズァン様!!」

 ここに来てムツヤが初めて叫んだ。

「そうね……。あなた達には……。あなた達には、この裏ダンジョンの真実を教えてあげるわ」

 そう言ってサズァンがパチンと指を鳴らす。それと同時にムツヤ達の意識が途絶えた。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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