囚われの田舎者 4

文字数 1,209文字

 翌朝、テントから出ると清々しいほどの快晴であった。すぐ近くに魔人が居るとは思えないほどだ。

 朝食を軽く済ませると、アシノが言った。

「皆、準備は大丈夫か?」

 それに全員が返事をする。アシノが頷くと馬車に乗り込んだ。

 貴族の城を目指して走っていると、途中で私兵らしき者が道を塞いでいた。

「止まれ、この先は通行止めだ」

「私は勇者アシノと勇者イタヤです。この先の城が魔人に占拠された可能性があります。通してもらいたいのですが」

「ダメだと言ったらダメだ!!」

 アシノはユモトに目で合図を送った。

「スリープ!!」

 兵士たちはカクンと気を失って倒れる。

「やはり、城の者たちは催眠に掛かっているようですね」

「そうですか、それじゃどうしますか?」

「少人数に別れて、城に侵入できないか試してみましょう。騒ぎにならないように、です」

「わかりました」

 馬車をここで置いて、皆はそれぞれ四方から城へ近づくことにした。



「何だお前は!!」

 まず、南から向かったユモトとヨーリィ、サワが私兵に見つかっていた。

「こんにちはー、カスタードプディング屋ですぅ」

 ユモトは満面の笑みで言う。

「なんだ、ただのプリン屋か」

 私兵は騙され、納得していた。催眠が掛かっている者は思考能力が低下してしまう欠点もある。

「違います、カスタードプディング屋です!!」

 ここで、サワがプリン屋と言われた事に対して訂正を入れる。

「……カスタードプディング屋が何のようだ?」

 怪しげな視線を投げかけながら私兵は言う。それに対してユモトは答えた。

「カスタードプディング屋ですから、カスタードプディング売ってます!」

 面倒くさくなったのか私兵はイラついている。

「あぁ、もううるさい!! どこか別の場所でやれ、殺すぞ!!」

「なんですか? 営業妨害ですか?」

 サワが言うととうとう私兵はキレた。

「貴様ふざけるな!!」

「カスタードプディング一筋10年、ふざけた事など一度もありゃせんぜ旦那!!」

 サワはノリノリになって言っている。ユモトも内心「サワさんってこんな感じの人だったっけ」と思っていた。

「口調をコロコロ変えるな!!」

「まぁまぁ、1個タダでサービスしますから見逃して下さいよ」

 そう言ってユモトはカスタードプディングを取り出す。

「当店はお客様のお口に直接カスタードプディングを流し込むサービスを行っておりまーす」

 サワが言うと私兵は大声を上げる。

「それサービスじゃねーよ!! ただの嫌がらせじゃねーか!!」

「つべこべ言わず食べて下さい!!」

「うぐっ!!」

 ユモトは私兵に近づいて手に持ったカスタードプディングを無理やり食べさせた。

「こ、これは!! 美味い!! 美味い!!」

 その言葉を最後に私兵は眠りについてしまう。

「なお睡眠魔法のトッピングもサービスとなっておりまーす」

 サワがふふっと笑いながら言った。

「こ、これで大丈夫なんでしょうか?」

「きっと大丈夫ですよ、ユモトさん!!」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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