とりあえず、海へ行こう! 3
文字数 1,887文字
近付くにつれて香る磯の匂いと、ザザーンと聞こえる波の音。
憧れの海の見える街へやって来た。
馬車を預けて街の中へ入る。そこは、スーナの街とは違った活気があった。
「すっげー!!! 魚がたくさん!! それに海が見える!!」
道沿いの店を見るとムツヤは子供のようにはしゃぐ。
「ひとまず宿を取るぞ」
アシノはそんなムツヤを尻目に冷静だ。
海は何度も見てきた。今更珍しいものでもない。
奮発して海の近くの大きな宿屋を目指す。世界を救ったとも言えるムツヤへ、アシノからのささやかな褒美のつもりだ。
「立派な宿ですね」
ユモトは思わず口にした。モモも頷く。外装だけでなく、内装も立派で、アシノは男女別に大部屋を2つ取った。
宿の前には海が広がり、大勢の人が海水浴を楽しんでいる。
備え付けの更衣室があり、そこで着替えて海までいけるらしい。
「さっそく恒例のカバンの中身チェックー!!!」
部屋の中でルーがそう言いながらムツヤのカバンに手を突っ込んだ。
「水着でろ水着でろ、出たー!!!」
ポンとビキニの水着が出てきた。
「お前、こういうのも拾ってたのか!?」
「はい、塔で見付けたものは全部拾ってまじだ!!」
スケベ根性は無いのだろうと分かってはいたが、アシノもモモも複雑な気分である。
「あ、そうだ。男子は部屋から出ていってー。後でのお・た・の・し・み♡」
残った女性陣はルーが次々と出した水着の中から自分に会うサイズの水着を選んで更衣室へ向かった。
「おっまたせー!」
更衣室から出てきたルーはシンプルな黒のビキニ姿だった。不健康的な白い肌とのコントラストが映えている。
「やっぱ水着って言ったらこれでしょー!!」
前かがみで胸を寄せると、それに合わせてムツヤの鼻の下も伸びた。
「ったく、そんな派手なの着やがって」
アシノはと言うと、上はワインレッドでクロスデザインの水着を着ており、下は水色の短いキュロットのような感じで、いつもの服装と少し似ている。
「あ、あの、私には似合わないんじゃ……」
そう言っておずおずと出てきたモモはピンクのワンピース型の水着を着ていた。
「可愛いですよ、モモさん」
「あっ、えっ、ありがとうございます……」
ムツヤの言葉にモモは顔を赤くして礼を言う。
その後ろからヨーリィが出てきた。
紺色の全身を覆う水着で胸の部分には白い横長の長方形があり、ヨーリィと名前が書かれている。
無表情のヨーリィの代わりにルーが騒ぐ。
「似合ってるでしょ!? しかも白い部分は着ると名前が浮かび上がるみたいなの!!」
「へぇー、ヨーリィも似合ってるよ」
「それで、ムツヤっちとユモトちゃんの水着なんだけど」
ルーが言うと全員が目をそらした。何だかユモトは嫌な予感がした。
「はい、ムツヤっちはこれ」
ムツヤに手渡されたのは、なんてこと無い普通の青い海パンだった。
「はい、ユモトちゃんはこれ」
ユモトに手渡されたのは、なんてこと無い普通の水色オフショルダーのビキニだった。
「って、ちょっと待って下さい!!」
滅多に怒ることのないユモトであったが、今回ばかりは流石に怒っている。
「これ女性用じゃないですか!!」
「あー、何か海パンムツヤっちの分しか無くて。何故か知らないけど女物の水着ばっかりなのよねー」
「じゃあ今から買ってきますよ!!」
ユモトは水着を買いに行こうとするが、まぁまぁとルーは止めた。
「ユモトちゃん、大丈夫!! 目立たないって!! 逆に海パンのが絵面的にアウトかも……」
「どういう意味ですか!? じゃあ下だけ、下だけ履きますよ!!」
ユモトは焦ってよく分からないことを言っているが、皆が全力で止める。
「それだと余計アウトだから!!」
「物は試しだ、着てみたらどうだ? それで変だったら買いに行けば良いだろう」
押しに弱いユモトは「うぅ……」と言って更衣室へ消えた。
しばらくして更衣室からムツヤが出てきた。海パン姿で。
その後ろではユモトが顔だけを出してこちらを見ている。
「ユモトさん大丈夫ですって!! 似合ってますから!!」
「似合ってるって言われても嬉しくないんですけど……」
水色のオフショルダーのビキニを着たユモトは、それはそれはもう、どこから見ても美少女だった。
「ユモトちゃん似合ってるよー!! それじゃ海へレッツラゴー!!!」
「やっぱりおかしいですって!!」
「ユモトさん早く海に行きましょう!! 海ですよ海!!」
ムツヤはユモトのことよりも目の前の海が待ち遠しいみたいだ。
「うー、絶対変態だと思われる……」
そんな事を言うユモトの手を引いてムツヤは海に向かって歩き出したのであった。
憧れの海の見える街へやって来た。
馬車を預けて街の中へ入る。そこは、スーナの街とは違った活気があった。
「すっげー!!! 魚がたくさん!! それに海が見える!!」
道沿いの店を見るとムツヤは子供のようにはしゃぐ。
「ひとまず宿を取るぞ」
アシノはそんなムツヤを尻目に冷静だ。
海は何度も見てきた。今更珍しいものでもない。
奮発して海の近くの大きな宿屋を目指す。世界を救ったとも言えるムツヤへ、アシノからのささやかな褒美のつもりだ。
「立派な宿ですね」
ユモトは思わず口にした。モモも頷く。外装だけでなく、内装も立派で、アシノは男女別に大部屋を2つ取った。
宿の前には海が広がり、大勢の人が海水浴を楽しんでいる。
備え付けの更衣室があり、そこで着替えて海までいけるらしい。
「さっそく恒例のカバンの中身チェックー!!!」
部屋の中でルーがそう言いながらムツヤのカバンに手を突っ込んだ。
「水着でろ水着でろ、出たー!!!」
ポンとビキニの水着が出てきた。
「お前、こういうのも拾ってたのか!?」
「はい、塔で見付けたものは全部拾ってまじだ!!」
スケベ根性は無いのだろうと分かってはいたが、アシノもモモも複雑な気分である。
「あ、そうだ。男子は部屋から出ていってー。後でのお・た・の・し・み♡」
残った女性陣はルーが次々と出した水着の中から自分に会うサイズの水着を選んで更衣室へ向かった。
「おっまたせー!」
更衣室から出てきたルーはシンプルな黒のビキニ姿だった。不健康的な白い肌とのコントラストが映えている。
「やっぱ水着って言ったらこれでしょー!!」
前かがみで胸を寄せると、それに合わせてムツヤの鼻の下も伸びた。
「ったく、そんな派手なの着やがって」
アシノはと言うと、上はワインレッドでクロスデザインの水着を着ており、下は水色の短いキュロットのような感じで、いつもの服装と少し似ている。
「あ、あの、私には似合わないんじゃ……」
そう言っておずおずと出てきたモモはピンクのワンピース型の水着を着ていた。
「可愛いですよ、モモさん」
「あっ、えっ、ありがとうございます……」
ムツヤの言葉にモモは顔を赤くして礼を言う。
その後ろからヨーリィが出てきた。
紺色の全身を覆う水着で胸の部分には白い横長の長方形があり、ヨーリィと名前が書かれている。
無表情のヨーリィの代わりにルーが騒ぐ。
「似合ってるでしょ!? しかも白い部分は着ると名前が浮かび上がるみたいなの!!」
「へぇー、ヨーリィも似合ってるよ」
「それで、ムツヤっちとユモトちゃんの水着なんだけど」
ルーが言うと全員が目をそらした。何だかユモトは嫌な予感がした。
「はい、ムツヤっちはこれ」
ムツヤに手渡されたのは、なんてこと無い普通の青い海パンだった。
「はい、ユモトちゃんはこれ」
ユモトに手渡されたのは、なんてこと無い普通の水色オフショルダーのビキニだった。
「って、ちょっと待って下さい!!」
滅多に怒ることのないユモトであったが、今回ばかりは流石に怒っている。
「これ女性用じゃないですか!!」
「あー、何か海パンムツヤっちの分しか無くて。何故か知らないけど女物の水着ばっかりなのよねー」
「じゃあ今から買ってきますよ!!」
ユモトは水着を買いに行こうとするが、まぁまぁとルーは止めた。
「ユモトちゃん、大丈夫!! 目立たないって!! 逆に海パンのが絵面的にアウトかも……」
「どういう意味ですか!? じゃあ下だけ、下だけ履きますよ!!」
ユモトは焦ってよく分からないことを言っているが、皆が全力で止める。
「それだと余計アウトだから!!」
「物は試しだ、着てみたらどうだ? それで変だったら買いに行けば良いだろう」
押しに弱いユモトは「うぅ……」と言って更衣室へ消えた。
しばらくして更衣室からムツヤが出てきた。海パン姿で。
その後ろではユモトが顔だけを出してこちらを見ている。
「ユモトさん大丈夫ですって!! 似合ってますから!!」
「似合ってるって言われても嬉しくないんですけど……」
水色のオフショルダーのビキニを着たユモトは、それはそれはもう、どこから見ても美少女だった。
「ユモトちゃん似合ってるよー!! それじゃ海へレッツラゴー!!!」
「やっぱりおかしいですって!!」
「ユモトさん早く海に行きましょう!! 海ですよ海!!」
ムツヤはユモトのことよりも目の前の海が待ち遠しいみたいだ。
「うー、絶対変態だと思われる……」
そんな事を言うユモトの手を引いてムツヤは海に向かって歩き出したのであった。