災厄の壺 8
文字数 1,320文字
ムツヤはウートゴを睨めつける。まるで彼がこの世のすべての悪を背負い込んでいるような気がした。
「俺達はみんな亜人に憎しみを持っている。俺も亜人に親しい者を殺されている」
「だからって…… だからって亜人の人達全員が悪いわけじゃないだろう!!!」
ウートゴが懐に手をやり、ムツヤは剣を抜く。
しかし、ウートゴが取り出したのは武器ではなく、タバコだった。
人差し指から火を出してふぅーっと一服やる。
「復讐なんてのは、ほとんどが生き残ったものの自己満足だ」
そのままタバコを吸いながら言う。
「憎しみのため、仇を討つため、怨みを晴らすため、まぁ、おおかたそんな所だ」
「でも、災厄の壺を使って亜人の人達を殺すなんて間違っている!!」
「間違ってなんか無いさ、いや、間違いようが無いんだ。正解が無いからな」
ムツヤは剣を抜いて構えた。やれやれとウートゴも裏の道具の巨大手裏剣を取り出す。
「お前は亜人を守りたい、裏の道具を取り返したい、その気持だけで戦っているのか?」
「そうだ!!」
「そうかな? 戦いの理由ってのは徐々にブレていくもんだ」
ウートゴはムツヤに向かって手裏剣を投げた。剣で軽々と弾くとそれは持ち主の手に戻っていく。
「最初は確かにそうだったかもしれない。でも、時間とともにお前も生まれたはずだ」
今度は手裏剣片手にムツヤの元へ走り始める。
「キエーウという組織や、俺に対する憎しみがな!!!」
剣と手裏剣がぶつかり合い、キイイインといった金属音が辺りに響き渡った。
ムツヤは屈んでウートゴの足元に蹴りを入れるが、それは飛び退いて躱されてしまう。
魔剣ムゲンジゴクに魔力を込めて炎の斬撃を飛ばす。
ウートゴはムツヤにも匹敵する速さでそれを避け、5体に分身した。
東洋の術で全てに実体があることは、アシノに教えてもらったので知っている。それぞれがムツヤを取り囲んで手裏剣を投げた。
ムツヤがダンっと足元を踏んで土壁を呼び出すと、ザクザクっと土壁に手裏剣が刺さる。
この中のどれか1つが本物の裏の道具のはずだと、ムツヤは近くの1枚を手に取ろうとした瞬間。
「無駄だ」
止まっていた手裏剣がグルグルと回り始めた、わずかだがムツヤは手のひらを切ってしまう。
手を握りしめて回復魔法を使ったので傷はすぐ塞がったが、外の世界に出て初めてまともな『攻撃』によってムツヤは傷を負った。
ウートゴはしばらくムツヤを眺めて、その後ケタケタと笑った。
「かすっただけで死ぬ毒を塗っておいたんだがな、なるほど、お前には効かないようだ」
ムツヤの体は裏の道具や裏の魔物による毒以外ほぼ効くことが無い。
「諦めて降参しろ!!!」
だが勝機はある。ウートゴはそう思った。この眼の前のガキは確かに強い、恐らくは自分よりもずっとだ。
しかし、殺すということを未だにためらっている。ならばそこを突けばいい。
3体の分身が背中の刀を抜いてムツヤに走り寄った。1体はそのまま真っ直ぐ来て袈裟斬りをする。
ムツヤはそれを剣で受け止めると、空いた左手でみぞおちを殴る。体に仕込んである鉄板にあたったのでそこまで手応えは無い。
まだ、残る2体が両側からやってくる。いったんムツヤは剣をしまって集中した。
「俺達はみんな亜人に憎しみを持っている。俺も亜人に親しい者を殺されている」
「だからって…… だからって亜人の人達全員が悪いわけじゃないだろう!!!」
ウートゴが懐に手をやり、ムツヤは剣を抜く。
しかし、ウートゴが取り出したのは武器ではなく、タバコだった。
人差し指から火を出してふぅーっと一服やる。
「復讐なんてのは、ほとんどが生き残ったものの自己満足だ」
そのままタバコを吸いながら言う。
「憎しみのため、仇を討つため、怨みを晴らすため、まぁ、おおかたそんな所だ」
「でも、災厄の壺を使って亜人の人達を殺すなんて間違っている!!」
「間違ってなんか無いさ、いや、間違いようが無いんだ。正解が無いからな」
ムツヤは剣を抜いて構えた。やれやれとウートゴも裏の道具の巨大手裏剣を取り出す。
「お前は亜人を守りたい、裏の道具を取り返したい、その気持だけで戦っているのか?」
「そうだ!!」
「そうかな? 戦いの理由ってのは徐々にブレていくもんだ」
ウートゴはムツヤに向かって手裏剣を投げた。剣で軽々と弾くとそれは持ち主の手に戻っていく。
「最初は確かにそうだったかもしれない。でも、時間とともにお前も生まれたはずだ」
今度は手裏剣片手にムツヤの元へ走り始める。
「キエーウという組織や、俺に対する憎しみがな!!!」
剣と手裏剣がぶつかり合い、キイイインといった金属音が辺りに響き渡った。
ムツヤは屈んでウートゴの足元に蹴りを入れるが、それは飛び退いて躱されてしまう。
魔剣ムゲンジゴクに魔力を込めて炎の斬撃を飛ばす。
ウートゴはムツヤにも匹敵する速さでそれを避け、5体に分身した。
東洋の術で全てに実体があることは、アシノに教えてもらったので知っている。それぞれがムツヤを取り囲んで手裏剣を投げた。
ムツヤがダンっと足元を踏んで土壁を呼び出すと、ザクザクっと土壁に手裏剣が刺さる。
この中のどれか1つが本物の裏の道具のはずだと、ムツヤは近くの1枚を手に取ろうとした瞬間。
「無駄だ」
止まっていた手裏剣がグルグルと回り始めた、わずかだがムツヤは手のひらを切ってしまう。
手を握りしめて回復魔法を使ったので傷はすぐ塞がったが、外の世界に出て初めてまともな『攻撃』によってムツヤは傷を負った。
ウートゴはしばらくムツヤを眺めて、その後ケタケタと笑った。
「かすっただけで死ぬ毒を塗っておいたんだがな、なるほど、お前には効かないようだ」
ムツヤの体は裏の道具や裏の魔物による毒以外ほぼ効くことが無い。
「諦めて降参しろ!!!」
だが勝機はある。ウートゴはそう思った。この眼の前のガキは確かに強い、恐らくは自分よりもずっとだ。
しかし、殺すということを未だにためらっている。ならばそこを突けばいい。
3体の分身が背中の刀を抜いてムツヤに走り寄った。1体はそのまま真っ直ぐ来て袈裟斬りをする。
ムツヤはそれを剣で受け止めると、空いた左手でみぞおちを殴る。体に仕込んである鉄板にあたったのでそこまで手応えは無い。
まだ、残る2体が両側からやってくる。いったんムツヤは剣をしまって集中した。