地獄の旅は道づれに 3

文字数 1,337文字

「ひとまず、村までご案内いたします」

「そうだな、こんな所じゃ体からキノコが生えそうだ」

 村長の言葉にサーラはそう返した。一行は村を目指して歩く。

 しばらく歩いて着いたその村は小さな村だった。家も20軒ぐらいしか無い。

 村長の家に招かれると、美しいエルフが出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。村長の孫娘の「ナヨ」と申します」

「あ、あぁ、どうも」

 トレイはナヨと名乗るエルフの美しさに思わず視線を逸らす。

「なんだ、アンタはこういう娘が好みなのかい?」

 サーラが意地悪っぽく言うとトレイは慌てた。

「なっ、お前何を言うんだ!!」

「別に良いけどさー?」

 2人のやり取りに村長もナヨも思わず笑っていた。

「さて、何からお話をしたら良いものですかな」

 村長が言うとサーラがトレイを親指で指して話す。

「こいつの話でも聞いてみるか?」

「そうですな」

 いきなり話題の中心にされてトレイはうーんと唸る。

「話って言っても、特に俺からは……」

「何かあるだろう? 勇者の弱点や苦手なもんとか」

 あぁ、そういう事かとトレイは勇者オガネの事を思い出す。

「オガネの…… アイツの弱点は特に思い浮かばない。何をしても強いやつだった」

「そうかい」

 サーラは頬杖をついてむくれていた。

「こちらの戦力はどんなもんなんだ?」

「アンタと私。以上」

 それを聞いてトレイはため息をつく。

「無理だ、勝負にもならない」

「無理でもやるしかないんだよ」

「どうやってだ……」

 呆れてトレイが尋ねると、サーラはニッと笑う。

「こっちには切り札がある」

 切り札と聞いてトレイはサーラの顔を見た。やはり何度見ても見た目だけは美しい。

「聖剣ロネーゼだ」

 サーラが言うと、村長が頷いて一振りの剣を手に取った。

「こちらでございます」

 トレイは手渡されてその剣を受け取ろうとするが。次の瞬間、手の力が抜けて剣を落としてしまう。

「あ、も、申し訳ない!!」

 急いで落ちた聖剣を拾おうとするが、剣に触れると力が抜けて握ることが出来ない。

「やっぱりか、今のアンタは自分自身が剣なんだ。だから握ることが出来ないんだろうな」

 代わりに村長が聖剣を拾い上げて、鞘から抜いた。

 その聖剣とやらを見てトレイは首を傾げた。剣というよりもナイフと言った方が良いぐらいの長さしか無かったのだ。

「これが…… 聖剣?」

「えぇ、聖剣ロネーゼでございます」

 村長がこんな状況で嘘や冗談を言うはずが無いと分かってはいたがトレイは釈然としない。

「聖剣ロネーゼは、歴代の勇者や戦士に使われ続けてすり減り、この様な形となりました」

「なるほど……」

 そういう事かとトレイは納得をする。そして、ふと思いついて言った。

「勇者に使われてすり減って、使い捨てられて、まるで俺みたいだな」

「何だ、急に詩人にでもなるつもりかい?」

 サーラはトレイの背中をバンバン叩きながら言う。

「まぁいいさ。それで、この聖剣とやらを誰が使うんだ?」

「私が使う」

 村長から聖剣ロネーゼを受け取ってサーラが言った。

「魔人の娘が聖剣を使うのか!?」

「使っちゃいけないって決まりなんて無いだろう? 練習だってしたんだ」

「そりゃそうだが……」

 そんな会話をしながらサーラは腰に聖剣ロネーゼをカチャカチャと取り付けた。

「これでヨシ!」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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