水面下 5

文字数 1,262文字

 サツキは王の間を後にし、アシノに連絡を入れた。

「ってな事を王は言ってるんですよ!! 私とアシノ先輩の仲を引き裂こうとしているんですよ!!」

「後半言ってる事は分からんが、まずい事になってるらしいな」

 うーんと腕を組んでアシノは考える。

「近くの冒険者ギルドに寄る。きっと連絡は行ってるだろうから、私達が現れれば国王からの命令があるって言われるだろ」

「何だか大事になってきたわね」

 ルーも手を上げてやれやれと言う。

「『黎明の呼び手』ですか……」

 ユモトはその組織の名前をポツリと呟いた。


 夜が明ける頃、ナツヤとフユミトは翼竜に乗って空を飛んでいた。最初は恐かったが、なれると気持ちが良いものだ。

「気持ちが良いねナツヤ」

「あぁ、そうだなフユミト!」

 その下を魔物の荷車が走る。ナツヤの仲間達はそこに居た。

「次の街は、金持ちが多く集まる街だね」

「あぁ、奪い返してやろう」

 ナツヤが言うとフユミトは、ふふっと笑う。




 一方、街の方では、こちらに向かってくる翼竜を衛兵が発見し、大騒ぎになった。

狼狽(うろた)えるな!! 兵士をこちらに集め、戦える冒険者にも招集をかけろ!」

 数十人の兵士と、多額の報酬を貰えると聞いた冒険者達が集まる。

「弓兵構えー!! まだだ、まだ引き付けろ……。今だ打て!!」

 矢がビュンビュンと飛ぶが、翼竜は一気に高度を上げ、攻撃の届かない場所まで来た。

 下から魔法の炎が打ち上げられ、数発被弾したが、翼竜が怯むことは無かった。

「ナツヤ、僕が拡声魔法を使うよ。言いたい事を言ったら?」

「わかった、頼む」

 フユミトが魔法を使った事を確認し、ナツヤは叫ぶ。

「俺達は『黎明の呼び手』だ!! 降伏しなければ殺す」

「なっ、翼竜の上に人が……」

 冒険者が口に出した。どよめきが広がる。

「黎明の呼び手って、いま噂の……」

「貧しい人々が居たら、俺達と一緒に金持ちを襲いましょう! 俺達は奪われてきた。今こそ奪い返す時です!!」

 衛兵長も声の拡声魔法を使い、ナツヤに言葉を返す。

「そのような事は認められん。去れ!!!」

 そんな会話をしていると、街に魔物がなだれ込んで来た。

「なんなんだよこれぇ!!!」

 冒険者はあまりに多い魔物を見て戦意を喪失している。

「兵たちよ行くぞ!! 我らは誇り高きギチットの兵だ!!」

 衛兵長が兵士を鼓舞するが、絶望した表情で魔物達を見ることしか出来ない。

 ナツヤ達が街を蹂躙するのに、そう時間は掛からなかった。

 兵たちは次々に斬られ食われ、抵抗する者は居なくなる。

 ナツヤとフユミトは街に降りる。恐怖を隠しながら街の代表者が近付く。

「もう、もう抵抗しませんから、住民の命だけは……」

「大丈夫です。俺達の目的は仲間を集める事と、金品を貰いに来ただけです」

 黎明の呼び手達は高級住宅街へ向かい、窓を割り、ドアを壊し、強奪を始めた。

 数時間経っただろうか、荷車に奪い返した物を載せる。

 そんな時、ナツヤの元にに血相を変えた仲間がやってきた。

「ナツヤさん! 大変だ! 冒険者の話だと勇者が俺達の討伐に向かってきているらしい!」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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