針と糸⑥

文字数 631文字

「……今、なんて?」

 昇降口で背後からかけられた言葉に、ユウキは立ち止まった。

「ついていっていい?」

 頭を傾けると、翡翠色の淡い髪が、サラサラと音を奏でるように揺れる。
ハルカは同じ高さにある親友の顔を眺めた。

「今日は広場の予定もないし、ジロウさんの手伝いもないんだろ?」

「……ないけど」

「遊びに行くんじゃなくてさ、お前の用事に俺たちも付き合わせろよ」

 ハルカの後ろには、こちらを伺う三人が、それぞれ異なる表情でこちらを伺っているのが見えた。

「昨日も突然休むし、今日はずっとぼけっとしてるし」

 アオイが歩み寄ってきた。

「いつものユウキと違う。どうしたの?何かあったんだろ」

 もじゃもじゃ頭の友人の言葉に、ユウキは聞き返した。

「顔に出てた……?」

 そして口元を手で隠しながら、しばらく考え込む様子になったユウキに、友人たち四人は唖然とする。手の下に顔半分が隠れていても、彼の表情が今まで見たことがないほど、緩んでいるのが分かったのだ。

「ちょっと、ユウキどうしたの?」

 ふっと笑いを漏らしたユウキに、ついに耐えきれなくなったミツキが食って掛かった。顔を隠していた手を、強引に外す。

「あんまり騒ぎ立てない」

 ミツキの腕をぱっと振り解いて、ユウキは言った。

「質問しすぎない。約束してくれるなら、ついてきていいよ」

 承諾の言葉だったのに、四人とも腑に落ちない気分だ。

 とりあえずユウキの後に続く。バスに乗り込むと、行き先はリリーの家だと告げられた。

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