19.発動

文字数 316文字

 それからしばらく、侑子の時は穏やかに流れた。

 基本的には午前中にリリーの家へ自転車で向かい、日中をそこで過ごし、午後にジロウの屋敷に帰ってくる。

 リリーとユウキ、そしてユウキの四人の幼馴染たちからこの世界のことを教わり、随分知識を得ることができたので、見通しがつくことも多くなった。
 リリーやユウキの歌を聴くために変身館に頻繁に出入りする中で、顔見知りも増えていった。

 魔法が発動することは相変わらずなかったが、魔法を使わなくても案外困らないという言葉が本当のことだと実感するのに、時間はかからなかった。
 この世界の多くのインフラは魔石によって動かされていたし、自らの魔力に頼らなくとも、日常生活を不自由せず送ることは容易いのだ。
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