117.夢の中へ
文字数 816文字
「王って、どんな人だったの?」
灯りを落とした部屋の中。
薄い掛け布に二人一緒にくるまりながら、侑子はユウキの声を聞いた。彼の胸にこめかみを押し付けるようにしていたので、囁くような小声でも、音の振動までしっかりと伝わってくる。
「そうだなぁ……年齢より若く見えると思ったかな。話し方もなんだか砕けてて、高貴な人って感じはしなかった。ちょっとお兄ちゃんを思い出したりしたな」
「サクヤさんを?」
「うん。でも……」
侑子の手を取って、「無意識」について語ったマヒトのことを思い返す。
あの時の彼には、彼自身の人格以外の何かが見えた。重ねたフィルター越しに見るように、不明瞭な何か。誰かの魔力を垣間見るように感じたそれは、神々しかった。
「やっぱり王なんだって思ったよ。嬉しくなった」
上へと身体をずらして、ユウキの顔と向き合う位置まで動いた。暗くてよく見えないが、彼の頬に触れる。
「嬉しくなったの」
「うん」
「私とユウキちゃんが生きていく世界は、これからも大丈夫って直感で分かったから」
優しく引き寄せられ、腕の中に閉じ込められた。心地よい圧迫感の中で熱を感じ、塞がれた唇の奥から新しい熱が生じていく。
「本当に覚悟はできてる?」
ユウキがどんな顔をしているのか、侑子には想像がついた。
「もう絶対、離してあげられないよ」
返答代わりの短い笑い声は途切れ、唇の重なる音へと変わった。衣擦れの音に続いて、二人の笑い声とベッドが軋む音が互いの耳に入り、聞こえてくる音は、次第に甘い類のものばかりになる。
「ずっとこのまま、一緒に」
途切れそうな意識の中、しがみついた肩に顔を埋めながら侑子は言った。
「ずっと一緒に……一緒にいる」
耳元で深い息遣いが聞こえる。
微睡む目の奥に、青く美しいものが見えた気がした。
「このまま、夢の中でも一緒に遊べたらいいのにね」
脳裏に描いた海と、遊園地。その場所へユウキを誘おうと、侑子は遠ざかる意識の中で、彼に深いキスをした。
灯りを落とした部屋の中。
薄い掛け布に二人一緒にくるまりながら、侑子はユウキの声を聞いた。彼の胸にこめかみを押し付けるようにしていたので、囁くような小声でも、音の振動までしっかりと伝わってくる。
「そうだなぁ……年齢より若く見えると思ったかな。話し方もなんだか砕けてて、高貴な人って感じはしなかった。ちょっとお兄ちゃんを思い出したりしたな」
「サクヤさんを?」
「うん。でも……」
侑子の手を取って、「無意識」について語ったマヒトのことを思い返す。
あの時の彼には、彼自身の人格以外の何かが見えた。重ねたフィルター越しに見るように、不明瞭な何か。誰かの魔力を垣間見るように感じたそれは、神々しかった。
「やっぱり王なんだって思ったよ。嬉しくなった」
上へと身体をずらして、ユウキの顔と向き合う位置まで動いた。暗くてよく見えないが、彼の頬に触れる。
「嬉しくなったの」
「うん」
「私とユウキちゃんが生きていく世界は、これからも大丈夫って直感で分かったから」
優しく引き寄せられ、腕の中に閉じ込められた。心地よい圧迫感の中で熱を感じ、塞がれた唇の奥から新しい熱が生じていく。
「本当に覚悟はできてる?」
ユウキがどんな顔をしているのか、侑子には想像がついた。
「もう絶対、離してあげられないよ」
返答代わりの短い笑い声は途切れ、唇の重なる音へと変わった。衣擦れの音に続いて、二人の笑い声とベッドが軋む音が互いの耳に入り、聞こえてくる音は、次第に甘い類のものばかりになる。
「ずっとこのまま、一緒に」
途切れそうな意識の中、しがみついた肩に顔を埋めながら侑子は言った。
「ずっと一緒に……一緒にいる」
耳元で深い息遣いが聞こえる。
微睡む目の奥に、青く美しいものが見えた気がした。
「このまま、夢の中でも一緒に遊べたらいいのにね」
脳裏に描いた海と、遊園地。その場所へユウキを誘おうと、侑子は遠ざかる意識の中で、彼に深いキスをした。