正解④

文字数 388文字

 侑子が次に紡久に会うことが出来たのは、翌日のギター練習の時だった。昨夜は夕食の時間にも顔を見ることは叶わなかった。

 昨日はごめんね、と一言だけ告げた彼の顔に影がさしたので心配になったが、その後はいつもと変わらない様子である。

 侑子には仔細を知る術はなかったが、想像すべきことではないと、何となく察していた。
 ただ彼が、こちらの世界に来る直前、酷く苦しい状況に置かれていたというだけ。そしてその場所に戻ることは、今後ないだろうということだけだ。

 侑子は久々に考えた。元の世界に戻れることがないという現実についてだ。
そのことを知った当初、侑子はただ果てることのない絶望感を感じたものだったが、紡久の場合はどうなのだろう。

 彼は戻れない、帰れないという状況について、もしかしたら侑子とは違う感情を抱いているのかもしれない。

 今後その気持ちについて、彼と語り合う機会はあるだろうか。
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