昔の歌④
文字数 661文字
数日前。
『素敵な歌だ』
呟いたユウキの声は、思わず口からこぼれ落ちたもののように小さかった。
歌い終えた侑子は、しばらくの間視線を宙に彷徨わせていて、そんなユウキの言葉は耳に入らない。
何年ぶりかに声に出して歌ったその旋律の美しさに、もう少しだけ浸っていたかった。
『もっと早く歌っていれば良かったな』
侑子の言葉に、返事をするのでも、問いかけるのでもなく、ユウキはただ黙って座っていた。
侑子が大好きだったというその歌に、ユウキが感心を示さないはずはなかった。
歌ってみてよ、と軽い口調で頼んだのが良かったのかも知れない。
侑子はしばらく逡巡した後、ためらいがちに『本当に久しぶりだから、歌詞を間違えるかもよ』と断った後に、思い切ったというように、息を吸い込んだのだった。
『何て名前の歌なの?』
歌い終えてぼうっとしている侑子の手を取りながら、ユウキが沈黙を破って問いかけた。
『この曲も謝恩会で歌おうよ。ユーコちゃんが歌って、俺はピアノで伴奏つけるよ。ほら、もう一回歌ってみて』
練習部屋として使っている屋敷の一室には、ギターの他にもピアノやドラムセットなど、様々な楽器が置いてある。ユウキがこれらの楽器に親しんできたのを伺わせた。
そんな部屋の一角に鎮座しているグランドピアノの前まで侑子を誘うと、ユウキは「ほら」と歌唱を促したのだった。
即興で様々な拍子の伴奏を弾いて見せるユウキの横で、何度も何度も侑子はその歌を歌うことになったのだった。
正確に覚えていた歌詞が、どんどん口をついて出てくる。
大好きな旋律に乗せて。
『素敵な歌だ』
呟いたユウキの声は、思わず口からこぼれ落ちたもののように小さかった。
歌い終えた侑子は、しばらくの間視線を宙に彷徨わせていて、そんなユウキの言葉は耳に入らない。
何年ぶりかに声に出して歌ったその旋律の美しさに、もう少しだけ浸っていたかった。
『もっと早く歌っていれば良かったな』
侑子の言葉に、返事をするのでも、問いかけるのでもなく、ユウキはただ黙って座っていた。
侑子が大好きだったというその歌に、ユウキが感心を示さないはずはなかった。
歌ってみてよ、と軽い口調で頼んだのが良かったのかも知れない。
侑子はしばらく逡巡した後、ためらいがちに『本当に久しぶりだから、歌詞を間違えるかもよ』と断った後に、思い切ったというように、息を吸い込んだのだった。
『何て名前の歌なの?』
歌い終えてぼうっとしている侑子の手を取りながら、ユウキが沈黙を破って問いかけた。
『この曲も謝恩会で歌おうよ。ユーコちゃんが歌って、俺はピアノで伴奏つけるよ。ほら、もう一回歌ってみて』
練習部屋として使っている屋敷の一室には、ギターの他にもピアノやドラムセットなど、様々な楽器が置いてある。ユウキがこれらの楽器に親しんできたのを伺わせた。
そんな部屋の一角に鎮座しているグランドピアノの前まで侑子を誘うと、ユウキは「ほら」と歌唱を促したのだった。
即興で様々な拍子の伴奏を弾いて見せるユウキの横で、何度も何度も侑子はその歌を歌うことになったのだった。
正確に覚えていた歌詞が、どんどん口をついて出てくる。
大好きな旋律に乗せて。