リリーから侑子へ②

文字数 1,013文字

ユーコちゃんへ


 学園祭はどうだった?
 ユーコちゃんがユウキとよく歌ってたあの曲を、同じ部活のお友達と歌うって聞いて、皆楽しみにしてたの。

 聞こえないとか、見れないとか、そういう問題じゃないのよ。

 私達には想像することができる。
 音も、風景も。
 
 大切なことは、頭の中にしっかり記憶されてるでしょう。

 だから大丈夫なの。


 私達のこと、いつも気にかけてくれてありがとう。

 ユウキから少し聞いたわ……ユーコちゃんが、寂しがっているって。
 
 ユーコちゃんの“寂しさ”の多くは多分、ユウキが原因よね?
……当然よ。

 私もね、ちょっとは共感できるつもり。私の家族も、ある日突然消えてしまったから。

 愛してる人に会いたいのに、現状を変える手段なんて見当たらない。悲しさは、埋めることは難しいわ。

 無理に誤魔化す必要はないのよ。
ただ認めるだけでいいんだと思う。
愛してる気持ちと、悲しいという気持ちを。
そうするだけで、随分目の前の景色が、くっきり見えてくるものよ。

 先輩ヅラして長々と書いちゃったね。

 モモカの近況について書くわね。

 相変わらず魔力は見えない。
やっぱり魔力を産まれつき持ってないってことで、間違いないみたい。
すっかり流行りに乗ったわね。

 そりゃ、最初はショックだった。
この子、おかしいんだって。普通じゃないんだって考えたら、目の前が真っ暗になった。ちゃんと産んであげられなかったって。

 でも今はどうでもよくなってる。
投げやりな気持ちとは、違うわよ?

 魔力がないことなんて、まるで気にならない。正直、そんなこと気にかける余裕がない。ああ、これもネガティブな意味で余裕がないってことじゃないわよ?

 モモカと過ごしてるとね、時間があっという間に経つの。
何回も泣き声を聞いて、何回も抱き上げて、授乳だって何回もするもんだから、きちんと服を着ることが非効率的に思えて、常に上裸でいたいくらい。(皆から止められたから実践してないけど)
 子供って、過ぎた時間分だけ、しっかり前に進んでいるのよね。

 子供は小さいから、成長が目に見えて分かりやすいけれど。
子供じゃなくても、皆確実に進んでいるのよ。

 魔力なんてなくても、人は生きていくし、日々は確実に進んでいく。

 ユーコちゃんもね。

 悲しくなったり、絶望しても、止まってるように見えても、着実に前進してるんだって忘れないで。

 学生生活、目一杯楽しみなさい!
 青春するのよ。今だけなんだから。


リリー

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み