39.ロボット
文字数 1,039文字
「ユーコちゃん、いるっ!?」
挨拶すら省いて、階段を駆け上がっていったのは、アオイだった。
朝食を済ませたばかりの侑子は、まだリビングで皆と談笑しているところだった。
リビング前のドアを素通りして、慌ただしい声と足音だけ残していった男に、一同はぽかんとした表情を浮かべた。
「何だあいつ。朝っぱらから騒々しいな」
可笑しそうに笑うジロウが、アオイを呼びに廊下へ出ていった。
「私に用事みたいだったね」
(ユウコの魔法のことかも)
タブレットの文字を読んだユウキが、「ああ」と短く頷いた。
「そうかもね。ユーコちゃんの魔法、あみぐるみ以外にもかけられるようになったから。多分協力依頼だよ」
「協力依頼?」
「アオイが今携わってる仕事、救助ロボットの開発なんだ」
「ロボット」
「そう! そうそうそう! ロボットだよ!」
侑子のオウム返しに、過剰な大きさの声で応えながら、アオイがリビングに大股で入ってきた。
彼は両手で、大きな縦長の金属質に光る物を抱えている。
「アオイくん、それ」
アオイが誇らしげに、それを床に直立させた――――侑子の背丈と同じくらいの、人型のロボットだった。
動く様子はないが、侑子が一目で「ロボットだ」と口にできる程に、外見的特徴は分かりやすい。
金属の骨と歯車とで、複雑に組み合わせた身体。血管のように見えるのは、赤いチューブだ。他にも白や黒、青など、様々な色の管がむき出しになっていた。
顔もある。瞳には大きなレンズが二つ。窓から差し込む朝日が反射して、まるで生きているかのように輝いていた。
「詳しい説明は省いていい? あ、うそうそ。ちゃんとするけどさ、とりあえず後で。……ユーコちゃん、こいつが動くように、魔法かけられる?」
ピィ? プゥ?
動かないロボットの足元に、あみぐるみ達が不思議そうに語尾を上げながら、集まってきた。
「こんな大きな物に、かけられるのかな」
「とりあえず、どうぞ! ホラホラ、試してみなって」
アオイがニコニコ顔で、侑子の背を押し、ロボットの方へ一方進ませた。
強い押しに押されるまま、侑子はとにかく両手をロボットの方へと翳してみた。
皆黙って、ロボットに注目していた。
――動いて
心の中で念じる時、いつも侑子は七年前のリリーとの魔法練習の風景を、思い浮かべるのだった。
柔らかな土の上で、見えない何かに向かって、懇願する。
感覚はあの頃とまるで変わってない。
自分の魔法が上達したとは、全く思えなかった。魔法を生み出す時の感覚には、何一つ変化はないのだから。
挨拶すら省いて、階段を駆け上がっていったのは、アオイだった。
朝食を済ませたばかりの侑子は、まだリビングで皆と談笑しているところだった。
リビング前のドアを素通りして、慌ただしい声と足音だけ残していった男に、一同はぽかんとした表情を浮かべた。
「何だあいつ。朝っぱらから騒々しいな」
可笑しそうに笑うジロウが、アオイを呼びに廊下へ出ていった。
「私に用事みたいだったね」
(ユウコの魔法のことかも)
タブレットの文字を読んだユウキが、「ああ」と短く頷いた。
「そうかもね。ユーコちゃんの魔法、あみぐるみ以外にもかけられるようになったから。多分協力依頼だよ」
「協力依頼?」
「アオイが今携わってる仕事、救助ロボットの開発なんだ」
「ロボット」
「そう! そうそうそう! ロボットだよ!」
侑子のオウム返しに、過剰な大きさの声で応えながら、アオイがリビングに大股で入ってきた。
彼は両手で、大きな縦長の金属質に光る物を抱えている。
「アオイくん、それ」
アオイが誇らしげに、それを床に直立させた――――侑子の背丈と同じくらいの、人型のロボットだった。
動く様子はないが、侑子が一目で「ロボットだ」と口にできる程に、外見的特徴は分かりやすい。
金属の骨と歯車とで、複雑に組み合わせた身体。血管のように見えるのは、赤いチューブだ。他にも白や黒、青など、様々な色の管がむき出しになっていた。
顔もある。瞳には大きなレンズが二つ。窓から差し込む朝日が反射して、まるで生きているかのように輝いていた。
「詳しい説明は省いていい? あ、うそうそ。ちゃんとするけどさ、とりあえず後で。……ユーコちゃん、こいつが動くように、魔法かけられる?」
ピィ? プゥ?
動かないロボットの足元に、あみぐるみ達が不思議そうに語尾を上げながら、集まってきた。
「こんな大きな物に、かけられるのかな」
「とりあえず、どうぞ! ホラホラ、試してみなって」
アオイがニコニコ顔で、侑子の背を押し、ロボットの方へ一方進ませた。
強い押しに押されるまま、侑子はとにかく両手をロボットの方へと翳してみた。
皆黙って、ロボットに注目していた。
――動いて
心の中で念じる時、いつも侑子は七年前のリリーとの魔法練習の風景を、思い浮かべるのだった。
柔らかな土の上で、見えない何かに向かって、懇願する。
感覚はあの頃とまるで変わってない。
自分の魔法が上達したとは、全く思えなかった。魔法を生み出す時の感覚には、何一つ変化はないのだから。