あの日の色④
文字数 570文字
普段は魔力に頼らない生活を心がける人でも、大晦日から一週間は、魔法の力を借りて日々を送る。
この大広間の中一つを切り取ってみても、そこは魔法に溢れた世界だった。
テーブルに並ぶ食事は、どれも魔法で出現させた物である。何種類もの飲み物、グラスに皿も同様だ。汚れた食器は魔法によって一瞬で清潔に清められ、子供の食べこぼしもすぐに片付けられる。
そんな色とりどりの魔力で溢れたその場所の中で、一段高くなった空間だけは、魔法と切り離されていた。
楽器とスピーカーから生み出される音は空気の振動で、それは魔力から生み出されたものではない。
生身の人間が指で鍵盤を押し、弦を弾き、スティックでヘッドを叩いて生じさせたのだ。
そして重なる二つの歌声も、二人の人間の身体から生み出される生きた振動。
その振動が空気を揺らす波の大きさは、一つ一つ違って、複雑に絡み合い、時には結ばれては離れながら人々の耳に届いていく。
曲が一つ終わる度に拍手と歓声が起こるのはライブハウスと同様だったが、ステージが一段高くなっているおかげで、かろうじて境界線が保たれている状態だった。
侑子のすぐ側まで人々は近づき、その場でいつの間にか誰もが身体を音の波に乗せて揺れている。
誰かが指示したわけでもないのに、そのリズムには一体感が生じていて、まるで揺れる水面を眺めているようだった。
この大広間の中一つを切り取ってみても、そこは魔法に溢れた世界だった。
テーブルに並ぶ食事は、どれも魔法で出現させた物である。何種類もの飲み物、グラスに皿も同様だ。汚れた食器は魔法によって一瞬で清潔に清められ、子供の食べこぼしもすぐに片付けられる。
そんな色とりどりの魔力で溢れたその場所の中で、一段高くなった空間だけは、魔法と切り離されていた。
楽器とスピーカーから生み出される音は空気の振動で、それは魔力から生み出されたものではない。
生身の人間が指で鍵盤を押し、弦を弾き、スティックでヘッドを叩いて生じさせたのだ。
そして重なる二つの歌声も、二人の人間の身体から生み出される生きた振動。
その振動が空気を揺らす波の大きさは、一つ一つ違って、複雑に絡み合い、時には結ばれては離れながら人々の耳に届いていく。
曲が一つ終わる度に拍手と歓声が起こるのはライブハウスと同様だったが、ステージが一段高くなっているおかげで、かろうじて境界線が保たれている状態だった。
侑子のすぐ側まで人々は近づき、その場でいつの間にか誰もが身体を音の波に乗せて揺れている。
誰かが指示したわけでもないのに、そのリズムには一体感が生じていて、まるで揺れる水面を眺めているようだった。