ロボット②

文字数 926文字

 ギギ……

 金属の歯車が、隣の歯車と噛み合う音がした。

「お!」

 両手で拳を作り、目を見開いたのはアオイだった。
もじゃもじゃ頭が嬉しげに震えたのを、侑子は見た。そして――――

 ぎこちない、さながら機械的な動きで、ロボットが首を回して辺りを見渡していた。

「動いたっ!」

 アオイの大声に、ロボットはビクッと身体を震わせた。そんな反応は、全く機械的ではない。足元のあみぐるみ達も、同じ動きをしていた。

「声でかすぎるんだよ、お前」

「ちょっと落ち着いてよ」

 ユウキにどつかれ、スズカに笑われながらも、アオイの興奮が静まることはなかった。

「だだだだってさ、ほら、見てみろよ! 俺のロボットが、う、動いて……」

 わななく腕を自制することすら出来ないらしい。アオイは身体を震わせて、終いには両目からボロボロと涙を流し始めた。

「ええ……アオイくん……」

 若干引き気味で見守っていた紡久は、感極まり過ぎて泣き出したアオイから、ロボットに視線を移した。

 金属の関節が、なめらかな動きを邪魔しているように見える。ロボット本人が想定した角度に関節が動かず、首を傾げながら、微調整しているような動きをしていた。
 ロボットはまるではっきりと意思があるような、そんな素振りを見せているのだ。
アオイの背中を、まるでなだめるように、金属の手が擦っていた。

「動いてる」

 侑子の独り言に、ヤチヨが笑顔で頷いている。

(凄い。でも、なんだか色々な部品が、邪魔そう)

 彼女も紡久と同じ印象を持ったようだ。

「動力はユーコちゃんの魔法だろうからな。このあみぐるみ達と同じように、本来ならもっと自由自在に動けるんじゃないか?」

 ジロウの言葉に、ロボット本人が大きく頷いている。

「そうか。お前、もっと滑らかな動きが欲しいか?」

 ようやく涙を流しきったアオイが、鼻をすすりながら、ロボットに問いかけた。

金属の頭が、左右に揺れた。

「あら、不満じゃないんですね」

 ノマの意外そうな言葉に、ロボットは頷く。

「ノマさん。俺にはこいつの想いが分かるよ」

「どういうこと?」

 したり顔のアオイに、スズカが説明を求めた。アオイ以外の全員が、彼女と同様の顔を浮かべていたのだろう。

アオイは得意げに口角を上げながら、説明を始めた。
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