27.鎧の外側
文字数 553文字
ユウキと二人連れ立って街の中を散歩するのは、侑子の日課だった。
早朝だったり昼間だったり、時には夕食後のこともあったが、二人は時間を見つけては必ず日に一度は散歩にでかける。
遊園地の中を縦横無尽に歩き回って遊んだ夢の記憶と重なって、二人の歩は自然と弾むように楽しげになるのだった。
しかしこの日の侑子は、どうしても足取りが重たいままだった。
エイマンから聞いた一連の話が、ずっと頭から離れない。
金のバッジをつけた、沢山の人の顔。
此方に向かって親しげに笑う人々。
自分と同じ世界を知っている彼らは、侑子と同じ空気を吸うことの叶わない、死の世界へと一人残らず旅立った後なのだ。
どこに目を向けても、平和な日常の時間しか流れていないように見えるヒノクニ。
しかしそんな国は、少し前まで戦場だったのだ。
今自分が踏みしめる地面に、誰かの血や涙が散ったのかもしれない。
耳に入る人々の日常の喧騒は、悲鳴や慟哭だったのかもしれない。
そんな空想で頭がいっぱいになってしまう。
「ユーコちゃん。大丈夫?」
足を止めたユウキが、覗き込んでくる。
今日のことをかいつまんで話していた侑子は、続きをどういう言葉で説明しようかと考えて、沈黙していたのだ。
侑子の説明は、研究施設への襲撃事件で来訪者たちが殺されてしまったところまで終わっていた。
早朝だったり昼間だったり、時には夕食後のこともあったが、二人は時間を見つけては必ず日に一度は散歩にでかける。
遊園地の中を縦横無尽に歩き回って遊んだ夢の記憶と重なって、二人の歩は自然と弾むように楽しげになるのだった。
しかしこの日の侑子は、どうしても足取りが重たいままだった。
エイマンから聞いた一連の話が、ずっと頭から離れない。
金のバッジをつけた、沢山の人の顔。
此方に向かって親しげに笑う人々。
自分と同じ世界を知っている彼らは、侑子と同じ空気を吸うことの叶わない、死の世界へと一人残らず旅立った後なのだ。
どこに目を向けても、平和な日常の時間しか流れていないように見えるヒノクニ。
しかしそんな国は、少し前まで戦場だったのだ。
今自分が踏みしめる地面に、誰かの血や涙が散ったのかもしれない。
耳に入る人々の日常の喧騒は、悲鳴や慟哭だったのかもしれない。
そんな空想で頭がいっぱいになってしまう。
「ユーコちゃん。大丈夫?」
足を止めたユウキが、覗き込んでくる。
今日のことをかいつまんで話していた侑子は、続きをどういう言葉で説明しようかと考えて、沈黙していたのだ。
侑子の説明は、研究施設への襲撃事件で来訪者たちが殺されてしまったところまで終わっていた。