開かれたもの③

文字数 511文字

 エイマンとリリーの二人がその場所に着いた時、瓦礫は綺麗に片付けられた後だった。

 建物が存在していたと思われる場所は綺麗に更地になっていて、立ち入らないように示す簡易な柵で囲われていた。

「燃えかす一つ残っていないのね」

「風が火の回りを早くしたのです。あの日は風なんて吹いていなかったはずなのに、火災の知らせが入った頃に突然強くなって……あっという間に炎に飲み込まれてしまいました」

 詳細を説明するのはこの神社に務める年若い禰宜(ねぎ)の一人だった。

 エイマンは目の前の何もない土だけの地表をしばし見つめた後、彼に向き直って質問する。

「火事が発生したのは二日前でしたね。私の方でもある程度情報は集めてきましたが、確認させていただきたい。犠牲者は?」

「この社の管理者であった宮司とその息子の禰宜。二人です。二人共自宅(この場所)にいたはずですから……間違いないでしょう。遺体も私が確認しました」

 僅かに震えた声で答えた禰宜に、リリーは気遣った声をかける。

「あなたの上司と同僚だったのね」

「……はい」

 エイマンとリリーは僅かにお互いの目を見交わした後、肩を震わせて泣き出してしまった禰宜を支えながらその場を後にした。今得られた情報だけで十分だった。
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