46.夜の散歩

文字数 775文字

 ヒノクニの幹線道路沿いには、モーテルをよく見かける。日本の風景との大きな違いの一つだった。

 侑子達の旅の夜の多くは、モーテルで過ごす事が多かった。キャンピングカーとトレーラー内の寝具では、全員がゆったりと眠ることは、難しかったからである。

 モーテルというものを、侑子は今回の旅で初めて知った。ホテルとの大きな違いは、宿泊部屋のドアが全て外に面しており、部屋の目の前に駐車スペースがあるということだろう。

「じゃあ、ユーコちゃん。おやすみ」

「明日はほぼ一日移動の日ね。ゆっくり休まなきゃ」

「おやすみなさい」

 ミツキとミユキが、車外に降りてすぐ、目の前の部屋へと入っていく。二人を見送った侑子は、再びトレーラーの中へと戻っていった。

 モーテルやホテルに宿泊出来る日は、大体一部屋に二人ずつ泊まる。車内の宿泊スペースも同様だ。
 誰と誰がペアになるのか、その組み合わせは、自然と最初から決まっていた。
ミツキとミユキ、アオイとザゼル、ハルカと紡久、アミとショウジ、ユウキと侑子だ。(レイは最年長であることを理由に、部屋数を確保できない日を除いて、専ら一人部屋だった。)

「あれ? ミツキたち、もう戻ったんだね」

 ドアを開けたユウキは、一人でソファに座る侑子を見つけ、意外そうな声を出した。

「酒とつまみ持ってきたんだけど」

「明日は移動だからって」

「そっか。俺達も早めに休まないとな」

 ソファのすぐ隣は就寝スペースだ。その場所へ侑子を誘おうとしたユウキだったが、何を思ったか、彼女の手を取ったままドアの方へ身体を翻した。

「寝る前にちょっとだけ、散歩しない?」

「夜散歩? いいね」

「さっき見つけたんだ。すぐ近くに、遊歩道があった。足場が整ってて歩きやすそうだったよ」

 ユウキの誘いに、侑子は躊躇しなかった。上掛けを手に取ると、すぐに彼の後に続き、トレーラーを後にした。
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