第302話悩む祐は、「本当に自分のやりたいこと」を考える

文字数 1,084文字

アパートに戻り、祐はようやく一人になった。(八幡山スタジオでの練習後、食事は付近の定食屋で済ませた)
(田中朱里は笹塚なので、方向が逆、八幡山の駅で別れた)

祐は、とにかく、モヤモヤとしている。
机に向かう気力もない。(超真面目な祐には、珍しいことではあるけれど)
だから、何も手にせず、ベッドの上に寝転んだ。(いつもは、何かしらの本を持つ)

ベッドの上でも、モヤモヤは消えない。
「とにかく、人から言われたことばかりだ」
「秋山先生の講演原稿・・・それが、どれだけ重いことか、投げ出したい」
「平井先生からの古今現代語新訳・・・話が進み過ぎて、ついには京都の親父の実家まで絡んで来た」
「これは、森田祐の力不足かな、情けない」
「万葉集・・・佐々木先生のバイトは、無難だけど、それに時間を取られる」
「お世話になっているから、仕方ないけれど」
「吉村先生との万葉の旅もある」
「あ・・・忘れてた、その前に葵祭で、純子さんたちを連れて行くのか」
「京都のじいさんとばあさん、叔父さんと叔母さんにも気をつかうなあ」

ジュリアの顏が浮かんだ。
「まさか・・・あんなことになるとは・・・」
「後悔はない」
「ジュリアでよかった、やさしかった」
「教わったような」

「でも・・・」
祐は、天井を見た。

共通することが、一つある。
「主導権が、何もない」
「人に求められるまま」
「そうしたいと思って、やったことが、ない」

「自分なりの、やりたいことを、思い切りやってみたい」
「他の仕事は・・・どうキャンセルすればいいのか」
「それが難しい」
「そうしないと、気持ちも身体も持たない」

祐は、また、気が変わった。
「中途半端はしたくない」
「求められる仕事をこなして」
「それでもなお、自分の本当にやりたいことに挑む」
「それが、ベストなんだろうな」

祐自身、新しく「自分が本当にやりたいこと」を見つけるべきと思っている。
「古文ではなく」
「音楽でもなく」
「写真でもない」
その意味で、母彰子や父哲夫、ジュリアなどの助けを貰う気持ちは皆無。

祐はベッドから起きて、自分が買った本を分析した。
「歴史、地理系が多い」
「万葉とか京都系もあるけれど」
「日本史以外では、古代ローマ、ベネツィア、フィレンツェ、ビザンティン、パリ」

祐は、思いついた。
「ヨーロッパ一人旅、放浪の旅もいいかな」
「失敗しても、何しても、誰も頼れない」
「むしろ、自分が鍛えられる」
「行くとしたら、夏休み」
「バイト代もたまっているし」

そう思ったら、希望とやる気が芽生えた。
「あと、必要なものは」
「体力と語学かな」
「英語の塾に通おうかな」

祐は、胸がたかまって、なかなか寝付けなくなってしまった。
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