第350話愛奈の提案を祐は受ける 再び抱き人形の夜

文字数 999文字

愛奈は、考え込む祐の隣に座った。(祐は表情を変えない)
そして、そのまま祐にもたれかかる。
「やってくれる?」(かなり甘えた声)

祐は、声も表情も変えない。
「わかった」
「やってみたい」

珍しく積極的な祐に、言い出した愛奈の方が、驚いた。
「うれし いけど、マジ?」

祐は、少し笑う。
「古文の現代語訳とライブバーの演奏」
「どれも、他人が書いたものを、自分なりに表現し直す感じ」
「でも、自分の感性そのものではないから」

愛奈は祐を横抱きにする。
「祐ちゃんの感性か・・・面白そう」

祐は、愛奈の髪の毛を撫でた。
「少し連休中に考えるよ、また連絡する」

愛奈は、祐の胸に顏を埋めた。
「私も、伊東に行きたいよ・・・」
「仕事で行けないよ・・・悔しい」

祐は、愛奈の髪の毛を、また撫でる。
「愛奈の笑顔を待つ人も多い」
「応えてあげて」

愛奈はコクリと頷き、祐から身体を離した。
アパートのドアを開ける前に、もう一度祐を思い切りハグ、そのまま帰って行った。

祐が、また考えていると、ノック音。
純子と真由美が入って来た。

純子は祐の右側に座った。
「お話、OKしたの?」
真由美は、対抗上、左側に。(祐はこの時点で身動きができない)
「愛奈ちゃんから、映像詩のこと、聴いた、私はOK」

再びの肉圧の中、祐は答えた。
「やってみたい、と言ったよ」
「伊東で時間があれば、構想を練る」

純子
「ナレーションならできるよ、元放送部」
真由美
「映像だから、ロケも必要」

「親父に言ってみる、森田事務所で交通費が出るはず」
純子
「朱里ちゃんと、春奈さんは?」

「朱里さんも、モデルできる」
「愛奈だけでないほうがいい」
真由美
「春奈さんは、コメント、テロップかなあ・・・」

「まず、一作、試しに作る」
「伊東に機材がある、音楽設備もある」
「神田事務所にもあるけどね」

純子は祐への肉圧を強めた。
「祐君が監督、楽しみ」
真由美
「そうね、ワクワクして来た」

祐は、肉圧に、慣れて来たようで、困った顔はしない。
「まず、原稿仕上げないと」
純子は、祐の表情が頼もしい。
「体力も気力も、復活したかな」
「とにかく元気な祐君がうれしい」
真由美
「ホッとしたら眠くなって来た」

祐は二人に頭を下げた。
「いろいろ、心配ありがとうございます」
「お休みしましょう」(祐は、こう言えば、二人とも帰ると思った)

しかし、そうではなかった。
一昨日の夜と同じ。
祐は、再び、純子と真由美の抱き人形と化し、眠ることになったのである。
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