第299話森田哲夫事務所にて

文字数 1,239文字

翌日の放課後(午後3時)、祐は神田の森田哲夫事務所に呼び出された。
理由は、桜田愛奈の森田哲夫事務所への転職の件。
祐は、「行った方が後が楽」程度の気持ちで、森田哲夫事務所に向かった。
(当然のように、純子、真由美、田中朱里も同行)

中央線の車内で、祐は簡単に森田哲夫事務所の説明を、三人の女子に行う。
「親父の使いやすいモデルがいてさ、その人が十人ぐらい」
「厳密には芸能プロではないけれど、グラビアモデルも何人か所属している」
「全身ばかりでなくて、身体の各部分の専門のモデルもいる」
「カレンダー、ポスターに少し映っている人もいるし」
「政府系とか、大企業の仕事が多い」
純子
「まさか、愛奈ちゃんがねえ・・・でも、安心かな、酷い社長みたいだから」

「僕と一緒の頃は、昨日逮捕された人のお父さん、まともな人」
「でも、二代目で、遊びが過ぎて、借金も多い」
「で、愛奈には似合わない水着モデルをと」
真由美
「愛奈ちゃんの水着ねえ・・・確かにそういう雰囲気はない」

「愛奈は、顏の表情で勝負するタイプだよ」
田中朱里
「モデルさんも大変、向き不向きもあるのかな」
祐は、ここで「注意事項」を伝達。
「本人の前では、水着不向きは言わないで」
「この前、それを言ったら、夜中に3時間怒られた」
純子は呆れた。
「マジにそれ言ったの?」
真由美は、ため息。
「女心は・・・難しいのに」
田中朱里は、驚いている。
「あの国民的美少女に、そんなハッキリと?」
祐は苦笑い。
「そういう遠慮が無い関係かな」
「悪ガキ同士みたい」

そんな話をしながら、祐の一行は森田哲夫の事務所に到着。
呼び出した、父森田哲夫が出迎えた。
桜田愛奈とマネージャーの吉田雅子、「事件」を処理している寺尾弁護士は、既に事務所に入っていた。

森田哲夫
「祐、昨日はご苦労さん」
「遅かれ早かれ、こうなるとは思っていた」
桜田愛奈は、目に涙をいっぱいためて、祐に頭を下げた。
「祐ちゃん、助かったよーーー怖かった」
「ありがとう、助けてくれて」
マネージャー吉田雅子もお礼の言葉。
「社長が二年前に代わって、愛奈も苦しみ通しで」
「何と、森田先生のプロに救っていただけるとは、ありがたくて」
弁護士寺尾は警察での状況を説明。
「社長は、結局小心者ですぐに犯行を認めました」
「余罪もあるらしい、他の所属タレントへの暴行とか脅迫とか」
「それにも調べが入るようです」

ずっと話を聞いていた祐が口を開いた。
「ところで、僕は何をやるの?」
「愛奈ちゃんの事件の最大功労者は恵美ちゃんだよ」
「僕は、寺尾先生に電話しただけ」

森田哲夫は、やわらかな顔。
「祐も、ここの事務所の関係者」
「愛奈さんの面倒を見てやってくれ」
「それから、一つポスターの依頼がある、祐も協力してくれ」

桜田愛奈は、恥ずかしそうな顔。
「祐ちゃんとなんて、うれしいなあ」
祐は慌てた。
「何・・・それ・・・」

森田哲夫は、クスッと笑った。
「参議院選挙の投票啓発ポスター」
「総務省から言われてさ、お前も18歳になったから」

祐は、首を傾げて、困惑顏になっている。
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