第388話講演本番① 真由美視点

文字数 879文字

祐君は、演台の横に立ち、綺麗に客席に向かって、すごく綺麗に、お辞儀。
(これだけで、いい感じ)
(客席のあちこちから、ほぉ・・・のため息もでるくらいです)
(元々、ビジュアル、特にお顔が超美形なので、うっとり気味のご婦人も多く見られます)

「ただいま、ご紹介をいただきました森田祐です」
(よし!祐君!落ち着いている)
(声もきれいに張っている、響いている)

「突然ではありますが、秋山先生の、代読者として、出来る限りを、務めさせていただきます」
「何分、不慣れでありますので、至らぬ点も多々ありますが、ご容赦願います」
(客席は、笑顔の学者さんが多い、もう、気持ちを惹き始めたのかも)

さて、祐君は、原稿を読む前に、「若菜上の簡単なあらすじ」の説明を行います。
(これも、打ち合わせ通り)

「若菜上は、皆様ご存知の通り」
「藤裏葉で、冷泉院とともに六条院に行幸した朱雀院が発病」
「朱雀院は、かねてから出家を望んでいたのですが、充分な後見役がいない女三宮が気がかり」
「そこで悩んだ末に、源氏に行く末を託すことにしました」
「源氏も迷った末に、結局、女三宮の後見を引き受けます」
「紫の上は、このことを知らされ、動揺しますが、立派に受け入れます」
「正月には、玉鬘から源氏に四十の祝の若菜が贈られ、夏に明石中宮がご懐妊」
「女三宮が六条院に、正妻として迎えられるのですが、光源氏は、その幼さに失望」
「改めて紫の上の素晴らしさを認めます」

祐君、ここで息を吐き、コップの中の紅茶(レモンをしぼりました)を一口。
「その後、紫の上、秋好中宮、夕霧が源氏の四十賀を次々に催し」
「翌年三月、明石中宮が皇子を出産、念願成就の明石入道はそのことを知り、明石の君や尼君に手紙を送り、山深く隠棲」
「三月に、六条院で蹴鞠の遊びが行われた際に、柏木は女三宮を垣間見る」
「そして、その姿が忘れられず、小侍従を介して手紙を送ります」

祐君は、そこまで説明を行って、いよいよ「講演代読」に移ります。
観客は、声も立てずに、祐君に集中しています。
やはり、祐君は、見かけより本番に強いなあ、私(真由美)は、ますます好きになりました。
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