第365話伊東合宿⑨姉瞳VS祐 姉の「魂胆」

文字数 1,405文字

私は、祐の姉、森田瞳。
祐が東京に行ってから、寂しくて仕方なかった。
いろいろ事件もあった。
アパートで倒れるとか、馬鹿な野球部に襲われて死にかけるとか。(そのたびに、私の心臓が止まりそうになるほど、驚いた)

祐もそう、鬼母彰子もそうだけど、私の祐に対する愛情を全く理解していないと思う。
祐に厳しくあたるのは、「耐えることを学ばせ」強く育って欲しいため。
(・・・たまには、自分のストレス発散もあったけれど)
(涙目の祐は、メチャ可愛いし)

で、ようやく伊東で祐を確保(捕獲!)した私は、祐を押し倒した。
(何しろ祐はウェストが細いので、抱きやすい)(抱き枕として、手ごろ感がある)

そうしたら、祐が文句を言って来た。
「姉貴、重い!太ったの?」(噛みつこうかと思った)
「そうじゃない、祐が弱過ぎ、鍛錬不足」
(事実だ、祐は格闘に弱い)

祐は、身体を動かして、脱出しようとする。
(でも、下手、私のホールドのほうが強い)
「降参しました、ごめんなさいは?」(まるで子供の頃と一緒)

祐も諦めたようだ。(素直に負けを認めた)
「降参しました、ごめん」
(・・・苦しくて真っ赤な顏だ、うれしい)

ようやく祐を解放すると、女子たちが、笑っている。
純子さん
「いや・・・お見事でした」(よし!この人好き)
真由美さん
「祐君はともかく、瞳さんの脚、きれいで・・・脚フェチになりそう」(うんうん、ずっと見ていてもいいよ、自信あるから)
春奈さん
「私も押し倒したいなあと、いいな、姉と弟って」
(あげない、私の祐だから)
朱里さん(この子もメチャきれい)
「祐君をパワーで封じる手もあるんですね、参考になります」
(・・・?祐を封じたいの?でも、この子も力を感じるなあ)
愛奈は弾ける笑顔。
「私も、子供の頃に、何度もやったよ、マジに抱きやすい身体」
(私に隠れて?許さん・・・でも愛奈も妹みたいなものだから)

ところがだ・・・
ようやく呼吸を整えた祐が、いきなり核心を突いて来た。
「姉貴のことだから、ただ、遊びには来ないよね」
(・・・嫌味のある言い方)
「どうせ、何か魂胆があるんでしょ?」

「それを今言えってこと?」(もう少し祐をいじめたいなあ)

祐は、口を尖らせた。
「あのさ、だから何?」
「僕たちは、遊びに来ているの、遊びたいの」
「突然、邪魔しに来たのは、姉貴でしょ?」
(・・・気に入らん、正論だ)

仕方ない、「魂胆」を言うことにした。(猫なで声にした)
「ねえ、祐」(最初の猫なで声で、祐は後ずさりした)

「もう、聞きたくない、帰って」
(この薄情者!また押し倒して、今度は噛みつくぞ!)

「あのさ、静岡県の広報誌があってさ」
(途端に、嫌そうな顔、スマホをいじり始めた)

「自分でやれば?」(祐のひややかな、顏と声だ)
「今は、東京都民だよ」(・・・この時点で一本背負いをしたくなった)

「私、文章苦手って知っているでしょ?」
(運動は祐の100倍は自信あるけど)

「県民の模範たるべき県庁職員が、文一つ、まともに書けないの?」
「だから、動くだけのゴリラ女って言われるの」
(マジに張り倒したくなった)

「ねえ・・・お願い」
「静岡県のためを思って」
「ホームページと広報誌に乗せたいの」
(ようやく魂胆を正確に言う)

「で、執筆者は森田瞳と・・・」(また痛いことを突いて来る)

「僕に何のメリットがあるの?」(あまり考えていなかった)

「えーっと・・・今川焼好きだよね」
(祐は、完全無視、ピアノに向かって歩き出した)
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