第301話風岡春奈は祐を思い続ける。

文字数 981文字

私、風岡春奈は、どうしても祐君との距離を詰められない。(すごく辛くて、悔しいけれど)
理由は、自分でもわかっている。
祐君だけではない、持って生まれた高いプライドのせいで、誰に対しても高飛車な態度を取ってしまうのである。(何としても、相手に対してマウントを取りたくなってしまう)
それと、祐君の周りには、可愛い子が多い。
純子、真由美、田中朱里、それからあの桜田愛奈(国民的アイドルでしょ?最初聞いた時は目が点になった)・・・だから、ジェラシーまで加算されて、心はボロボロだ。

祐君の音楽も好きだ。(共演者のジュリアも女性として憧れる)
祐君自身は、「音楽は余芸」と言い切っているので、少々安心する。
「もし、引っ張られたら、古今の世界から、いなくなる」そんな不安もあったから。

さて、そんな思いでウジウジしている時に、祐君から意外な連絡があった。
「春奈さん、葵祭を泊りがけで見ませんか?」
「宿泊先は、父哲夫の京都の実家、呉服屋と料亭を兼営しています」
「ついでに古今新訳用の衣装を見るかもしれません」

二つ返事だ。
「行きます」
「うれしい!」(つい、ハートとキスのスタンプをつけてしまった)

祐君から返信が来た。
「チケットは森田哲夫事務所が対応します、往復グリーンになります」
「取れたら、連絡します」

私は、ドキドキして仕方がない。
もう、どうにもならないので、祐君の肉声を聞きたくなった。
「祐君!」

祐君は静かな声。
「はい、いろいろとお願いしてごめんなさい」

「そうじゃないの、うれしいの」

祐君
「春奈さんに喜んでもらうと、僕もうれしいです」(その声も可愛い)

可愛さついでに、私が誘ってみた。(もう、心臓バクバクだ)
「今度デートしない?」(ストレート過ぎ?いいの、ぼかしたくない)

祐君
「・・・予定がつけば、いいですよ」(まあ、無難な返事、どっちとも取れるし)

「そば粉のクレープ出すお店があるの、小さな店だけど、味は保証する」
「私の友達がバイトしていて、来てって」

祐君の声が弾んだ。
「面白そうです、楽しみです」

祐君との「肉声通話」は、そこで終わった。

で・・・また眠れない。
腕の中に、祐君が欲しい(その逆は・・・蕩ける)

「もう、心も身体も、祐君にマウント取られた」
「押し掛けたいよ、祐君」
「年上はだめ?」
「私、そんな怖くないよ」

結局、お酒を飲んで寝る、それ以外に眠るための方策は見つからなかった。
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