第232話八幡山スタジオでの練習 そして散歩

文字数 1,091文字

祐君と、私、純子は中村先生の八幡山のスタジオに入った。
私が、内部を見渡して、「へえ・・・ほお・・・」の連続をしていると、祐君が説明してくれた。
「中村先生ほどになると、家庭と離れて専門のスタジオを持ちます」
「防音は当然、演奏の録音機器も完備」

祐君は、さっそく練習(基礎練習のみ)に取り掛かった。
練習時間は、きっかり1時間で終えた。

私は聞いてみた。(曲も聴きたかった)
「曲は弾かないの?」

祐君は、恥ずかしそうな顔。(可愛いけれど、ここは真面目に話を聞く)
「いや、基礎練習がおろそかだったことは確か」
「それを先生に指摘された」
「わかってはいたけれど」

私は、信じられなかった。
「私、まったく気がつかなかった、すごく上手だなと」

祐君は首を横に振る。
「弾き始めは、指が思うように動かなくて、後半に動く」
「緊張だけではなくて、練習不足が原因」
「実家では、かなりサボっていたし、アパートにもピアノはないから」

私は祐君が可哀想になった。
「それで練習不足を指摘されてもねえ・・・」(中村先生が鬼に思える)

祐君は、真面目顔だ。
「中村先生は、そんなの認めない」
「僕も、そう思っていたし、自分でも、もどかしかった」
「思うように弾けないのは、辛かった」

八幡山のスタジオを出て、祐君推薦のケーキショップに入った。
祐君は、ザッハトルテ。
私は、フルーツタルトを頼んだ。(でも、分け合う)

祐君はザッハトルテで、にっこり。(お人形顔)
「懐かしい味・・・」
私もザッハトルテを先に食べる。
「ほろ苦さと甘さ、いいね」
祐君は、顔がやわらかい。
「忙しくなったけど、面白いかな」
「いろいろやれば、何か見つかるかも」
私も、そう思う。
「祐君の古文も音楽も好き」(祐君そのものが好きやけど)

店も混んで来たので、店を出て「歩き」で、千歳烏山に帰ることにした。

祐君
「こういう散歩も新鮮でいいかな」
私も、見慣れぬ東京の住宅地を歩くのが面白い。
「住宅地だけど、小物屋さんも多いね」
「芸術家も多いのかな」
祐君は、珈琲豆屋さんを見つけた。
「入っていいかな」
反対する理由がないので、一緒に入った。

珈琲豆も、紅茶の種類も多い。
それと外国の御菓子も多い。(ヨダレがでるほど)
祐君が珈琲豆を数種類買ったので、私は紅茶を買う。
(当然、チョコレートも多めに買った)

珈琲豆屋さんを出て、しばらく歩くと、明太子女からコール。
「純子さん、例の名古屋嬢が、来たいって、どうします?」
「何でも手羽先と味噌煮込みうどん、らしい」
私は即答。(迷っても意味はない)
「かまわん、もう友達や、心配いらん」

祐君は祐君で、誰かからのメッセージを読んでいる。(・・・そっちの方が気になる)
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