第192話祐は神経を使い過ぎて胃痛、純子の横抱きと朱里の間接キス?

文字数 1,306文字

祐君は、ジュリアと握手、再会の約束(いつかは不明)、マスターにも礼を言って、店の外に出た。(そこまでは、ありうるかなと思った)
ところが、私、純子と田中朱里にも、頭を下げて来た。
「とんでもない恥ずかしい演奏と、その前に、呼んでもいない人が邪魔して来て申し訳ない」

私は、祐君と強引に腕を組んだ。(祐君・・・どないした?と不安)
「どうして謝るの?祐君、何か悪いことしたの?」

田中朱里さんも、祐君に驚いたみたいだ。
「あの・・・純子さんの言う通り、すごく感動したもの、12年ぶりの、国境も越えた出会い、それから、春も素晴らしかった」(うん、ジュリアさんの気持ちも痛い程や、泣けるよ、そういうの)

ただ、そう言っても、祐君の顔は晴れない。(顏も蒼ざめている)
顔を下に向けて歩く。(何か悩み?聞きたい・・・ほんま・・・その苦しそうな顔は何?)

午後1時からの授業は、大教室での西洋古代史。
田中朱里も、少し不安なのか、祐君の隣に座っている。
祐君は、真面目な顔で、しっかりと聞く。(ノートの字もきれい、整理してメモするから、そのまま参考書になる・・・って、そんな状態でない、顔がますます蒼い)

講義が始まって30分経過。
祐君は、おなかを抑え始めた。(おなかが痛いのかな、そんな感じ)
私は、そっと声をかけた。
「医務室に行く?」
田中朱里も、「そのほうがいいよ」と、心配顏。

でも、祐君は、けなげに首を横に振る。
「大丈夫、時々ある、我慢していれば治る」

恵美ちゃんの言葉を思い出した。
「祐ちゃんは、頼まれたことに真面目過ぎて、自分を追い込む、それが半端ではないの」
「それで胃を壊す、風邪を引く、そういうのが多い」
「それを、お姉さんの瞳さんが、弱虫って責めるの」

私は、祐君の背中から腕を回し、支えた。(横抱き状態)
「祐君は、あちこち、神経使い過ぎかな」
「大先生達からの難しい仕事、それも全部、メインだよね」
「今日は田中朱里さんにも神経を使って」
「その最中にジュリアさん、(私たちにも気をつかったと思う)」
「そのうえ、プロが演奏する店で、プロのジュリアさんと、いきなり演奏だもの」
「そもそも繊細な祐君だよ・・・本当に苦しい、神経も身体も悲鳴かな」

田中朱里が「え?」と私と祐君を見て来るけれど、気にしない。
もちろん、周囲の学生の視線も気にならない。

それでも、田中朱里には、キッパリと言った。
「祐君は、お疲れモードなの」
「医務室には行かない、少ししたら治るって言うから、こうして支える」

祐君が絞り出すような声を出した。
「ごめんなさい、純子さん」
「医務室まで行かない、ではなくて・・・胃が痛くて歩けそうにない」

その時だった。(私は・・・マジにうかつだった)

田中朱里が、自分のバッグから、胃薬と水のペットボトル。
「祐君、はい、お薬とお水」

祐君は、「ありがとう」と胃薬を口に含む。(そこまでは・・・まあ、いいかな)
祐君が飲むペットボトルの水の「キャップ」を確認し忘れたのだ。
「もしかして・・・間接キスを?」(・・・田中朱里は、うれしそうな顔しとる、マジに気に入らん・・・)(でも、最初の間接キスは、私、だから、今回はあくまでも緊急の医療行為と認めることにした)
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