第47話祐は奈良のホテル住まいになった理由を白状する。

文字数 939文字

祐は、「どう話したらいいのか」、本当に困った。
正直に「真実」を話したら、間違いなく、純子に「呆れられる、馬鹿にされる、嫌われる」と思った。

でも、「お世話になった和菓子屋さんの娘さん」「今もご縁のように隣に、またお世話になっている」と思った。

「嫌われてもしかたない」と思ったけれど、「正直に話す」と意を決して、「白状」した。

「話をしたこともない女の子」「話をしようとしたら隠れるか逃げてしまう女の子」に、数か月、毎日後をつけられたこと。
その女の子の母親が、高校に怒鳴り込んで、祐を呼び出して金切り声で責めたこと。
「何で、私の娘を無視して苛めるの?」
「お前は、それでも男か!人間性のカケラもない!」
「娘が悩んで受験に落ちたら責任を取れ!」

高校の担任も校長も「祐に非はない」をわかっていたこと。
しかし、付きまとう女の子の母は、極道と関係が深いスナックのホステス。
その「極道」を恐れて、しっかりとした「対応」を取らなかった、いや、取れなかった。

女の子の母親が、祐の自宅にも何度も押し掛けたこと。
言って来ることは、高校で言うことと同じ。
祐の母は、きっちり対応した。
「祐に非はない」
「祐はあなたの娘さんと付き合いをする気持ちはなく、しなければならない理由はない」
「むしろ、祐が振り向けば、隠れるか、走って逃げるのは、あなたの娘さんでしょう?」
「そういう証言を多くの学生さん、先生、近所の人から聞いています」
「これ以上、祐に何を望むのです?」

しかし、女の子の母親は、「切れて」、「人でなし!」とか「薄情な母と子!」と大騒ぎして帰るだけ。
その上、女の子の「付きまとい」は、変わらず続いた。

あまりの酷さに父は、夏休みの時期を考慮した。
「夏休みだけでも、避難しなさい」
「ホテルの部屋を借り切ったよ」
「奈良で、毎回泊まる、元興寺の近くの、あのホテル」
「お金は気にしないで、祐がトラブルに巻き込まれるほうが、怖い」

母は、奈良女子大の大学講師に連絡を取った。
「万葉集の先生、私の教え子で、吉村茜さん」
「彼女も奈良町住まいだから、何かあったら、面倒を見てくれる」

祐は、奈良町のホテル住まいになった理由を、ポツポツと話した。

目の前の純子は、「白状」が進むにつれて、目をウルウル。
とうとう、祐の手を握って来た。
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