第317話祐君は杉田香織のハグを受けることに

文字数 1,330文字

祐君は、小島美容院を逃げ出すように出た。(大笑いされていたけれど)(桜田愛奈は、警備上の問題で、残った・・・少し可哀想だった)
私、純子は、祐君の肩をポンと叩く。
「そう、ムクレない、可愛いよ、あの写真」
祐君は、「はぁ・・・」とお疲れ顏。
でも、すぐにスマホを手に取って「杉田香織さんと電話」と断って、通話を始めた
(この律儀さが、祐君らしい・・・でも、何やろな、わからん)

ところが、祐君の声は神妙だ。
「そうなんですか、それは、辛いかな」(祐君・・・お悩み相談員になっとるし)
「何とか・・・うん・・・」(お役に立とうと?やさしいから・・・祐君は天使や)
「わかりました、練習をしたいと・・・」(でも、接近禁止したい・・・)
「スタジオでもいい?」(おいおい・・・あかん)
「それでは、八幡山に、いいスタジオがあるので」(ますます・・・このお人好し!)
「はい、1時半にお待ちしています」(はぁ・・・ますます独占できんし)

電話を終えた祐君は、シレッとした顏だ。
「1時半に八幡山のスタジオで、杉田香織さんとデュオします」
「興味がない人は、それぞれの行動を」

・・・しかし、そんな不謹慎極まる行動が許されるわけがない。
(何が不謹慎?それは祐君独占禁止法違反だ)
(・・・私は独占したい、法の網を破っても)
(何?矛盾しとる?いや、これが女心や)

真由美さんは、キレ顏だ。
「ダメ、私も聴きたいし」
田中朱里も、顏が真っ赤。
「はぁ?杉田香織さんって、危ない人ですよ、また迫られたらどうするんです?」
春奈さんも、加勢した。
「無理よ、祐君、みんな八幡山のスタジオに行くって」

下を向く祐君に、私は、やさしい言葉。
「祐君の好きなケーキをプレゼントする、それでどう?」
祐君は、素直だった。(目をクルクルとして)
「フランボワーズで、お願い」(周囲に女どもがいなかったら、ムギュしたいくらいに可愛かった)

1時半に八幡山駅で杉田香織と合流。(祐君を見る杉田香織の顏は、真っ赤、うれしそうだ)
その後、おなじみのケーキ店でケーキを買い込み、八幡山の中村雅代先生のスタジオに到着。
「ケーキは、休憩の時」と、祐君が言うので、お預け状態で、祐君と杉田香織のデュオが始まった。

最初はバッハの曲。
祐君は、ゆったり目のテンポで前奏、それに、杉田香織のヴァイオリンが乗る。
(尚、スタジオと私たちの間には、ガラスの防音仕切りがあって、私たちの声は聞こえない)

春奈さん
「上手と思うよ、聞ける」
田中朱里
「うん、きれいな弾き方と思う」
真由美さん
「祐君は、どう感じているのかな、普通顔だし」

「それは、ジュリアに比べれば・・・うん・・・」

バッハが終わり、杉田香織は、肩で息をしている。(相当緊張したらしい)
(ここで休憩と思った・・・でも違った)

祐君が杉田香織に楽譜を渡し、今度はモーツアルトのアップテンポな曲。
田中朱里
「うわ・・・香織さん、楽しそう!」
春奈さん
「祐君も、笑った!」
真由美さん
「これなら、ライブバーでも通用する、楽しく華やかなモーツアルト」

「香織さん、良かったね、本当に」
「あんな素直な顏見たことない」

ただ、よからぬこが起こった。(私たちにとって)
モーツアルトが終わった途端、杉田香織が祐君に抱きついて、泣いているのだから。
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