第175話大学近くの喫茶店(夜はライブ店)にて

文字数 1,448文字

さすが、学生街なので、大学の門を出ると、安くてボリュームのあるお昼を出す店が多い。
私、純子と祐君は、その中でも、少し落ちついた感じの喫茶店に入った。
ただ、喫茶店といっても、夜はお酒を出すような感じ。
カウンター奥の棚に、ウィスキーのボトルがたくさん並ぶ、「大人の店」風だ。

「いらっしゃいませ」(渋めの声、マスターらしい)(かなり上品かつ渋め、50代?)

私と祐君は、少しぎこちなく、(まだまだ、子供感がある)カウンター席に座る。
奥様だろうか、妙齢のエプロンをした女性が注文を聞いて来た。(でも、ピンクのエプロン、花柄が可愛い)

祐君は
「サンドイッチと珈琲」(やはり祐君は小食だ)

「オムレツとダージリン」(私のほうが量が多い?)

少し間があって、マスターが話しかけて来た。
「一年生かな?」
祐君は可愛い顔。
「はい、よろしくお願いします」
私も少し頭を下げる。

マスター
「初々しいね、いい感じ」

祐君は、質問。(素直な感じ)
「ここは、夜は・・・」
マスターは笑顔。(ふんわりとして、いい笑顔だ)
「うん、ライブをやる」
「あそこをステージにして、ジャンルは問わない」
「昨日はバッハ、今日はシャンソン、明日はジャズとか、プロも出るよ」
祐君は可愛い笑顔。(男の人相手なら許す)
「楽しそうですね」

マスターは、珈琲を祐君の前に、紅茶も私の前に。
「おいで、これも縁だよ」

祐君は珈琲を一口・・・目を丸くする。
「美味しい・・・まろやかな」
私も紅茶を一口・・・陶然となった。
「甘い、ここまで甘味が?」

奥様?が、サンドイッチを祐君の前に、オムレツを私の前に置いた。
祐君は、また目が点(可愛いなあ・・・そのおめめ)
「パンの香り・・・バターの香りが・・・」
でも、私もオムレツを見て、え?え?え?の感じ
「玉子?バター?すごくいい香り」

祐君は、実に美味しそうに食べる。
「パンもバターも自家製ですか?」
マスターは、にっこり。
「うん、ありがとう、パンもバターも玉子も自家製、ハムもレタスも朝一の農家直送」
「米も実は、我が家の米」

私は、うれしくなって、お礼まで。
「美味しくて、生き返るような・・・ありがとうございます」

食べ終わった頃、祐君の目が、カウンターの奥のカレンダーに向いた。
・・・森田哲夫絶景カレンダーだ。

私は、祐君の脇をつついた。(お買い上げありがとうございます、は?)

しかし、祐君は慎重派だ。
「あのカレンダーは?」とさりげなく、聞く。
マスターは、うん、と笑顔。
「森田哲夫さんね、彼が大賞を取った時からの、大ファンでね」
「本当に、風景でも、人物でも、いいなあと」
「家内もファンで、カレンダーは毎年買っています」
「ここに来るミュージシャンも、好きだよ」

祐君は、ようやくだ。
「あの・・・実は・・・僕の父です」
「僕は、森田祐で・・・カレンダーの一番最後のページに名前が乗っています」
「お買い上げ、ありがとうございます」

マスターの顔色が真っ赤になった。
「え?本当?うわーーー!おい!」(おい!は奥様を呼んでいる)
奥様も出て来た。
マスターから聞いて、目をパチクリ。
「あらー・・・恐れ多い・・・はぁ・・・」

結局、お昼代は取らなかった。(受け取ってくれなかった)
祐君は、しっかりお辞儀。
そして、スマホを哲夫さんにつないだ。(キチンとした、良い子だ)
哲夫さんとマスターの話が終わって、店を出る時、マスターから声をかけられた。
「また、おいで」
「夜のライブも待っているよ」

祐君は、大きな声で「はい!」
(・・・見たことのない、キラキラフェイスだ・・・また、惚れた)

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