第171話叔母芳江の祐への思い

文字数 1,101文字

私、芳江にとって、祐君は天使のように可愛い男の子だった。
亭主が、貿易商で海外出張が多くて、そして子供にも恵まれなかったので、寂しい生活だった。

だから、たまに別荘に来る祐ちゃんは、本当の癒しだった。
「可愛いし、やさしいし・・・気が利くし」
だから、いつも抱っこしていた。

お母さんの彰子さんは苦笑いで、お姉さんの瞳ちゃんは妬いていた。
でも、私は、祐ちゃんを見ると、ほぼ突進気味。
特に小さい頃は、無理やりに抱っこした。

祐君も、私を見ると、涙顔。
「どうしたの?」って聞いたら、「お姉ちゃんに苛められた」が多かった。
まあ、瞳ちゃんは、元気がいいタイプ、祐ちゃんみたいな大人しい子は、面白くなかったのかな。

お母さんの彰子さんも、少し祐君には、厳しめ。(教育上かな、あれをしなさい、これをしなさい・・・手抜きをしない!って時々叱っていた)
哲夫さんは、大らかなタイプなので、「まあまあ」と彰子さんと瞳ちゃんをなだめていた。

彰子さんは、哲夫さんにベタ惚れだから「はーい」とすぐにおさまった。
でも瞳ちゃんは、祐君に厳しかった。(家でも泣かせているらしい)

だから、私は、(私の前だけでも)、祐君を甘えさせたかった。
祐君にも、癒しが必要と思った。(私も、祐君の笑顔で癒されたから)

祐君が「彼女候補を連れて来る」と恵美ちゃんに聞いた時は、妬いた。
「どういう子なの?」と確かめてあげようと、思った。

昨日の観光、お食事、音楽会、そして今日の朝からの一碧湖、小室山、城ケ崎を歩きながら、さり気なく観察した。
結論は、すぐに出た。(二人とも、大丈夫だ。少なくとも、彰子さんや瞳ちゃんよりも、祐君にはいいかな)

純子さんは、ふっくら大らかなタイプ。
繊細な祐君を、包み込むような安心感。
真由美さんは、ハキハキとして、明るい。
祐君も、そのテンポで、顔が明るくなるのかな。

(心の中で、祐君を頼みます、と願った)

そして、今、全ての観光コースを終え、熱海に向かって車を走らせている。
後部座席では、祐君が真ん中、両隣に純子さんと真由美さん。
祐君は、すやすやと寝ている。(・・・可愛い・・・まだまだ子供顔)
でも・・・純子さんも、真由美さんも、祐君に肩を寄せて眠っている。(これは妬けるなあ・・・辛いよ)
助手席には、恵美ちゃん。
時々、祐君たちを見ては、つまらなそうな顔。

だから、聞いてみた。
「妬いているの?恵美ちゃん」(意地悪かな・・・と思った)

恵美ちゃんは、素直だ。
「うん・・・なんか・・・取られた」(そう言って、また後ろの座席を見る)

「二人ともしっかりしている」
「守ってもらおうよ」

「うん」
恵美ちゃんは、グジュグジュの声。

私、芳江も、ホロッとしてしまった。
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