第48話祐君の話は続く

文字数 848文字

私、純子は祐君が、そんな辛い目に遭っていたとは、全く知らなかった。
「言い辛かった話」と思うし、「無理強いしてしまったのかな」とも思うし、とにかく祐君が、可哀相だった。

祐君の手をそっと握るくらいしかできない自分も情けない。

「ごめんなさい、変な話で」
祐君は、下を向いたままだ。

「辛かったね」
「話してくれて・・・ありがとう」
(本当にうれしさもある、私を信頼してくれた、と感じた)

「また、お母さんに逢いたいです」
「奈良は、第二のふるさとかな」
(祐君は、泣けることを言ってくれる)

「一緒に奈良に行こうね」
「母も喜ぶよ」

祐君は、顔をようやく上げた。
恥ずかしそうな顔をしている。(その顔も、メチャ可愛い)

ただ、私は、奈良から静岡に帰ってからのことも気になった。
つまり、その「気持ち悪いストーカー女の子」が、「どうなったのかについて」である。
だから、「また祐君が下を向くかもしれない」と思ったけれど、聞いてみた。

「・・・で、その変な女の子とは、その後、どうなったの?」

祐君は、また、顔を曇らせた。
「夏休みにも何回か、実家の周りに来たそうです」
「隣の家にも、何度も聞いたとか」
「それを嫌がった隣の家が、その女の子のお母さんに苦情」
「でも、その子の母さんは、逆ギレ」
「僕と僕の両親が悪いって」
「結局、警察が、その女の子と、母親に注意」
「それでも、聞かなかったようですが」

私は、祐君のご両親の心労も大変と思ったけれど、祐君は、まだ続きがあるようだ。
お茶を少し飲んで、話す。

「友人の話ですが、何でも、突然、いなくなったようです」
「夏休みが終わる一週間前ぐらいに」
「小さなアパートに二人で住んでいたようですが」
「これも、友人の話です」
「何でも、高利貸しに追われていたようで」
「・・・夜逃げ・・・らしい」


祐君は、間を置いた。
「だから、秋からは、顔を見ていません」

私は、この時、本当にホッとした。
そして、ホッとしたら、腕が止まらなかった。
「祐君!良かった!」
そのまま、祐君を抱き締めてしまった。(捕獲?保護?どっちでもいい!)
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