第17話祐の疑問 美咲の告白

文字数 824文字

祐は美咲の「接近」が、よくわからない。
確かに従妹恵美の友人とはいえ、東京に出たばかりの、親戚での「歓迎会」に参加するものだろうか。
「そこまで固く」考えなくてもいいのか、とも思うけれど、指まで握って来るのは疑問符がつく。

それでも美咲は、少しして、顔を赤らめながら祐の指を解放した。
「祐さんが、お食事ができなくなりますよね」

すると恵美が美咲を笑う。
「しっかり楽しんだの?」

美咲は、ますます赤い顔。
「それは・・・恥ずかしい・・・まったく恵美は・・・」

祐は、何を言っていいのかわからない。
黙って出された食事を食べるだけになった。

「歓迎会」が終わったのは、夜8時。
祐は、叔母一家に丁寧にお礼を述べて、店を後にした。
美咲も日本橋駅から帰るので、一緒に歩く。

「あの・・・祐さん」
美咲は、少し祐に身体を寄せる。
祐は「何?どういうこと?」と思ったけれど、美咲の接近を避けられない。

美咲は、また顔を赤くする。
「お願いがあって・・・」
祐は、「はい・・・」と少し身構える。

美咲はバッグからスマホを取り出した。
「あの・・・アドレス交換させてもらいたくて・・・」

祐は、少し迷う。
しかし、従妹恵美の親友でもあるし、断るのも不自然と考えた。
「わかりました」と、自分のスマホも取り出す。

すると美咲は、花が咲いたような輝く笑顔。
「ありがとうございます!」
動きも速い。
あっと言う間に、祐のスマホを手に取り、アドレス交換を完了。

スマホを戻してもらった祐は、「これで・・・良かったのかな」と少し笑う。
(内心は、従妹の顔をつぶさない。そんな程度だった)

しかし、美咲の次の言葉は、祐が全く予想していないものだった。
「森田祐様、紫の上のブログ、本当に感動しました!」
「私、何度も読みなおして・・・涙して・・・宝物です!」
「そんな森田祐様に直接お逢いできて、アドレスも交換していただいて・・・」
「森田祐様の直接ファンの第一号になれました!」

驚いて言葉が出せない祐の腕を、美咲がしっかりと組んでいる。
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